このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

議会騒然!? 「セックス休憩法案」が可決の見こみ!?【B級ニュース】

2017/02/28


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「スウェーデンで勤務中セックス休憩法が!?」について。


watashihaSEX_s

『私はただセックスをしてきただけ』
サタミシュウ KADOKAWA ¥562+税
(2015年7月25日発売)

北欧からトンでもないニュースが舞いこんできた。
なんとスウェーデンの地方議員が「勤務中にセックス休憩」の提案をしたというのだ。

ン、なんという先進国ッ!

 

かつてスウェーデンといえば、日本へのポルノ輸出国として有名だった。
そのため、ある世代のお父さん方は「スウェーデン」と聞くだけでパブロフの犬状態なのである。 その頃の日本はといえば、鈴木則文監督が『徳川セックス禁止令 色情大名』(1972年)という、大名が領民の性行為を禁ずる映画を上映していたのだから、なるほどスウェーデンをうらやむ気持ちはわからんでもないッ!

ただし、早とちりは禁物だ。
スウェーデンは70年代に「フリーセックス運動」がさかんで、これは実際のところは現在でいうところの「ジェンダーフリー(性別の社会的役割からの解放)」運動だったのだが、日本のお父さんたちはポルノのイメージが強すぎたせいで「スウェーデン=性のワンダーランド」との幻想を抱いた黒歴史がある。

断言しよう、日本の男はアホである。

今回こそ世界に恥をさらさないように、早合点せず、よくよくこの案件を精査してみるべきだ。
なになに、自宅に戻ってパートナーと性交渉するために1時間の有給休暇を取るべき……って、そのまんまかよ!

ただ、この議員の言いぶんとしては「現代社会ではカップルがいっしょに過ごす時間が不十分」とのことらしい。
まぁ、それはそうかもしれないが、だからといって勤務中にする必要はないだろ、というのが正直な感想だ。それに「1時間」てのは、さすがに慌ただしくないッスかね、スウェーデンさん。

この「セックス休憩法案」はまだ成立していない提出段階のものだが、とはいえ世界には信じられないような法案や条例が実際に存在するのも事実。
さらにいえばマンガの世界では、「セックス休憩法案」に負けないくらい、トンでもない法律や条令が描かれてきた。

といったわけで今回は、マンガの世界のヘンテコ法律特集である。


BattleRoyaleBUNKO_s01

『秋田文庫 バトル・ロワイアル』 第1巻
高見広春(作) 田口雅之(画) 秋田書店 ¥657+税
(2013年7月10日発売)

変な法案といえば、『バトル・ロワイアル』(原作:高見広春、作画:田口雅之)だ。

作品の舞台となる大東亜共和国では、全国の中学3年生から50クラスが毎年選抜され、「プログラム」と呼ばれる殺人ゲームが開催されていた。
中学生同士が殺しあいをするというショッキングな内容が話題を呼んで、カルトなヒット作となり、深作欣二監督による実写映画(2000年)は国会でも取りあげられるほどセンセーションを巻き起こした。

この「プログラム」は国家が運営しており、その結果はテレビや報道を通じて国民に知らされている。まさに国家ぐるみの悪法(映画版ではBR法と呼称)だが、作中でその意図が明らかにされてく。
マンガ版は『バロン・ゴング・バトル』などで一部に熱烈なマニアをつかんだ田口雅之で、本作でも独特のゴア表現やエロ描写、バトル展開が話題を呼んだ。
原作とは異なった味わいだが、田口ワールドならではの楽しみがつまった作品であった。


takkoku_s01

『タッコク!!!』 第1巻
福地翼 小学館 ¥400+税
(2009年9月17日発売)

『タッコク!!!』(福地翼)は、卓球告白法が施行されている世界である。

大の卓球狂の大泉洋一郎首相は、卓球王国チャイナを打倒するため、若年層の育成を目的に卓球告白法を成立させた。
この法律は10~18歳に適用され、「好きな人に卓球を申し込み、勝利すると強制的にその相手とつきあうことができる」ものだ。
卓球告白法(略してタッコク)にのっとっていない恋愛は、ジャッジマンによっておしおきされるという、トンでもない超管理社会なのだ。

ギャグテイストの強いスポーツ×ラブコメ作品だが、こんな法律がまかりとおるディストピアSFのような匂いを感じさせてくれるあたりがたまらない。
まさしく「BIG BROTHER IS WATCHING YOU」の世界である。

作者の福地翼はデビュー作『うえきの法則』や、現在連載中の『サイケまたしても』で一風変わった能力バトルを描いてきているだけに、この『タッコク!!!』にもトンでもない必殺技を持ったキャラが登場。
主人公のガクは、10年にもおよぶ海外生活のキャリアでつちかった様々なスキルを卓球に応用し、幼なじみのカコに告白するために卓球の腕を磨く。
しかしカコは、中学生卓球ランキング1位の、卓球最強女子なのであった。

はたして、ガクの思いは届くのかッ!!


しかし、フィクションの法律を笑ってばかりもいられない。

三重県紀勢町(きせいちょう)には、キューピット条例なるものが存在する。
これは中年齢者の結婚促進を目的とした条例であり、それによって地域活性化をねらっている、らしい。
紀勢町にはキューピット委員(年報酬30,000円)が置かれ、委員の仲介によって成婚すれば1組につき委員に20万円が支給される。
結婚の当事者ではなく、キューピット(仲介者)に金を支給するというのがこの条例のミソだ。

まあ、内容だけ聞くと「余計なお世話だ」といいたくなるところだが、地方自治体にとってはそれほど人口減と少子化が深刻なのである。


tendeshouwaruCUPIDbunko_s01

『てんで性悪キューピッド』 第1巻
冨樫義博 集英社 ¥648+税
(2002年11月発売)

さて、キューピットといえば、もちろん『てんで性悪キューピッド』だ。
『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』でおなじみの冨樫義博の連載デビュー作である。

主人公の鯉昇竜次は鯉昇組の跡取りの中学3年生。現実の女性にはまるで興味がない。
彼を一人前のスケベにするために送りこまれたのが、本作のヒロイン・聖まりあである。
あの手この手で竜次を誘惑し、そのお色気シーンの多さで当時の読者たちを完全にノックアウトしたのであった。
いってみれば『ゆらぎ荘の幽奈さん』『To LOVEる』といった「ジャンプお色気路線」のパイセン作品だ。


未婚率の上昇と少子化の傾向は、いまや先進国では共通の悩み。
終戦直後の昭和22年ごろには、日本では自治体が主導して合同お見合いイベントを開催し、それが戦後のベビーブームにつながった。
自治体主催の婚活パーティなんて軽い話題でお茶を濁すのではなく、それこそ国ぐるみで「セックス休憩法案」ぐらいのことをしないと、日本の人口減少は食い止められないのかも?

われわれの社会は『バトル・ロワイヤル』のように子どもを「殺す」のではなく、「生まない」という選択をして、ゆるやかに自殺していっているのかもしれませんね。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

  • 『秋田文庫 バトル・ロワイア… Amazonで購入
  • 『タッコク!!!』 第1巻 Amazonで購入
  • 『てんで性悪キューピッド』 … Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング