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【日刊マンガガイド】『わたしの宇宙』第2巻 野田彩子

2014/09/09


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『わたしの宇宙』第2巻
野田彩子 小学館 \590+税
(2014年8月29日発売)


第1話から禁断の技が炸裂した。
「この世界は、マンガなんだ」
保健室に来た双子の弟・星野真理と、クォーターの少女・津乃峰アリスに、主人公の星野宇宙が告げる。そう、彼ら3人と同級生の祖谷毅士は、自分たちが普通の中学生ではなく、マンガの登場人物であることに気づいてしまったのだ。

『わたしの宇宙』は「メタ」という特殊状況下で、それに葛藤する中学生たちをメインにした、世にも珍しい学園マンガである。
言葉で説明するのは難しい。人によっては壮大なギャグマンガと感じるかもしれない。彼らにはふきだしが見え、マンガ特有の「キラキラ」という表現の「キラッ」がほっぺに刺さることもある。笑いどころは多い。

もちろん、突然足元が揺らいだ被創造物の苦しみや怒りを描いた狂気的なサスペンスでもある。いやいや、シチュエーションは風変わりだが、祖谷くんと彼を溺愛する千代子ちゃんのぎこちない恋と、ヒロインのアリスを巡って双子が牽制し合う三角関係、ふたつを軸にした青春恋愛ストーリーという側面もある。

とにかく、少しでも気になったら読んでみてほしい。読んでもきっと、分類不能だ。

2巻は、完結巻ということもあってストーリーは哲学的な方向へと突き進んでいく。「作者」が作中に登場するという、もうひとつの禁断技も使われて、ますます状況は混乱に陥る。「マンガが終わる」ということは、星野兄弟もアリスも祖谷・千代子カップルも消える(=死ぬ)ということ。彼らはどうなるのか……。

考えてもみれば、毎日自分の足で人生を歩んでいるように思える私たちも、それを証明できるのは写真や日記、周囲の人々の記憶ぐらいなものだろう。写真や日記をマンガ、周囲の人を読者と置き換えれば、私たちもキャラクターも大して変わりはしない。
本書は、自己存在のもろさ、危うさへの叫びでもあり、キャラクターは生きているという愛の賛歌でもある。



<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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単行本情報

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