業界注目度No.1!?
「このマンガがすごい!WEB」が誇るランキング選者に協力いただくアンケート集計をもとに、決定される毎月恒例の「このマンガがすごい!」ランキング。今月のランキングは……。
今月オトコ編の第1位に輝いたのは、漫画家・水上悟志の短編集! 水上悟志といえば『スピリットサークル』、『戦国妖狐』『二本松兄妹と木造渓谷の冒険』など、怪異やファンタジーものを手がける作家。そんな著者渾身の短編集がマンガファンのあいだでも注目を集め、堂々の1位に輝きました! 特に話題になったのは収録作「虚無をゆく」。団地に住む少年がある日突然つきつけられた「現実」と「虚無」とその行方とは!?
さらに、ほかにランクインした作品にも見ていきましょう! 『ジャングルの王者ターちゃん』徳弘正也の描く人情時代劇マンガ(もちろん下ネタ満載♥)や、なんつーかアレでとびっきり強い女子を描く漫画家・高遠るいのマンガが2冊同時ランクイン! さらに『このマンガがすごい!2018』オトコ編第1位に輝いたあのマンガの新刊も……!
今月もマンガファンの胸を熱くさせる作品が多くランクインしたランキングを、アンケート回答者のオススメポイントとあわせてチェック!!
(2018年1月1日~1月31日発売作品を集計)
第1位(196ポイント)
『水上悟志短編集「放浪世界」』 水上悟志
『水上悟志短編集「放浪世界」』
水上悟志
マッグガーデン
今月のランキング第1位に輝いたのは、『スピリットサークル』、『戦国妖狐』の水上悟志による短編集。収録されているのは、他人に見分けられないようふるまうのが趣味な双子の少女の話、人間の頭の上に住む小さな宇宙人の話、中年になって中学生時代のファンタジー的妄想が実現したサラリーマンの話、バケモノの肉を売る侍と毒見役の少女の話に、団地で暮らす少年と宇宙を放浪する巨大ロボットの話……と、日常系からファンタジー、時代劇にSFと扱っているジャンルはじつにバリエーション豊か。
クスリと笑える日常を軽やかに描いたものから、数ページめくるたびに読者の予想を裏切っていく壮大なスケールの作品まで、著者の様々な一面が凝縮された、初めて読む人も以前からのファンも楽しめる珠玉の短編集だ。
オススメボイス!
■双子のモブ顔姉妹、人間の頭の上のゆる キャラ的宇宙人、中年サラリーマンに突如訪れる冒険ファンタジー、バケモノ喰い稼業の道行きを描いた短編四編に、大スケールの中編一編を収録。中編「虚無をゆく」は、世代間移民船型巨大団地ロボットを舞台に、クローン、珪素生命体、AIの三者の関係と目的、そしてある「連鎖」の終わりと始まりを描いた、てんこ盛りなストーリーに圧倒された(糸田屯/ライター、ブログ「(怒りの以下略)」管理人)
■「虚無をゆく」が圧巻。「ノスタルジックな内容かなー」と油断していた読者を大質量のおもしろさでぶん殴ってきたぞ!(フラン/ブログ「フラン☆Skin」管理人)
■コメディのような小品から圧倒的なスケールのSFまで、様々な短編が並ぶ。が、どの短編にも(長編に引き延ばすことも可能であろうと思わされる)奥行きが備わっている。最長である「虚無をゆく」が代表的か。しかし、流行のグルメ・マンガを水上悟志がやるとこうなるという「エニグマバイキング」の変化球ぶり、痛快でいて、笑いも泣きもある展開にシビれてしまう(森田真功/ライター、ブログ「Lエルトセヴン7 第2ステージ」管理人)
第2位(118ポイント)
『もっこり半兵衛』 徳弘正也
『もっこり半兵衛』
徳弘正也
集英社
とある事情で脱藩し、赤子だった娘を連れて江戸へやってきた月並半兵衛。失脚した大老・柳沢吉保を偶然助けた彼は、吉保の提案により『江戸の用心棒』として夜回りをすることに。吉保との出会いから8年、彼は今日も江戸の平和を守るため、提灯片手に夜の町を歩く。
『ジャングルの王者ターちゃん』や『狂四郎2030』の徳弘正也の最新作は時代劇。貧しい町人や夜鷹たちを優しく見守り、横暴を振るう悪人を厳しく成敗する半兵衛の姿はこれぞ時代劇ならではのヒーローといったあんばいだ。各話ごとに江戸で暮らす人々の苦しみや悲哀を描きながら、きっちりと人情話に落としこむ著者の腕前はまさに円熟の域。だというのに得意とするアグレッシブな下ネタは若い時と変わらず今作でも冴えわたっているからすごい。
オススメボイス!
■常に作品に熱意があふれる徳弘正也先生の最新作『もっこり半兵衛』。パッと見の派手さがなくても、ベテランならではの迫力は健在。とても読ませるオススメの1作です。ぜひ買ってください(林子傑/海外翻訳者)
■べテラン徳弘正也、健在。下ネタのテンポよいギャグを中心としつつ、主人公の内罰的な生活に胸が痛む(加山竜司/フリーライター)
■『ジャングルの王者ターちゃん』『狂四郎2030』の徳弘也最新作。犯罪の発生数に対して公的な取り締まり人員が圧倒的に少なかった江戸時代を舞台に、防犯の夜回り仕事にやとわれた浪人が夜鷹(最下級の娼婦たち)の苦しい立場に優しくよりそいながら、トラブルを解決していくという、人情味あふれる時代劇になっている。おなじみの下ネタギャグは、題材にセクシャルな世界が含まれているので結果的にストーリーと自然になじんでいるのがおもしろい。時代劇はウケないという理由で雑誌掲載してもらうのに苦労した経緯をつづったあとがきも必読。結局連載には至らず単発読切を複数回やったのをまとめるかたちの単行本化で、徳弘先生クラスでもそういう苦労を……と世知辛くなる。そんなしのびなさも作品内容とマッチしてはいるのだけれども(宮本直毅/ライター)
第3位(88ポイント)
『レッドマン・プリンセス -悪霊皇女-』 高遠るい
『レッドマン・プリンセス -悪霊皇女-』
高遠るい 秋田書店
19世紀初頭に、白人の植民地支配に抗い戦った、ショーニー族の戦士・テカムセ。そして現代21世紀に、テカムセの霊が日本人の女子高生・暁宮星子に乗り移ったことから物語は幕を開ける。女子高生の身体で現代に甦り、超常的な力をもってアメリカとの戦いを再開しようとするテカムセ。ここまでならばよくある話なのだが、本作の問題はこの星子がただの女子高生ではなく、やんごとなき血筋にあらせられる――すなわち日本の皇女様であるという点だ。
星子を拘束できなければ日本国内での爆撃も辞さないと主張する合衆国大統領。そんなことをいわれても、星子の立場が立場なだけに簡単に引き渡すこともできない日本政府。そんな状況を知ってか知らずかアメリカへの復讐に燃えるテカムセ、そしなんとかしてテカムセを追いだしたい星子の親友の屋敷クリス。国家の複雑な事情と個人の切実な想いが絡み合いながら進んでいく物語の行く先は……?
女子高生ポリティカル伝奇ロマン、ここに開幕!
オススメボイス!
■エンタメより作家性をストレートに出した結果、良質なエンタメになっているという不思議な作品。エロありグロありタブーなし、自由な筆致でのびのびと殺戮を描く快作。ここからいかようにも話が転がりうるドキドキ感がたまらない(raven
/ディレッタント)
■数々の政治ネタ、似顔絵ネタのみならず、本当に日本のプリンセスが出てくるという神をも恐れぬ堂々っぷりに拍手したい。お漏らし総理が安部ちゃんなのかなあ(マクガイヤー/ブログ「冒険野郎マクガイヤー」管理人/ニコ生主)
■2018年の日本に著者が投げかけたオカルト政治シュミレーション。現代の変種でありながら本来のエンタメの王道。現代日本を危機に陥れるのは、帝都破壊を企む魔人やまつろわぬ民の末裔といった我々の内側からの使者ですらないのだ(四海鏡
/石ノ森章太郎ファン)