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『オール・アバウト村上克司』 村上克司 【日刊マンガガイド】

2017/04/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『オール・アバウト村上克司』

  
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『オール・アバウト村上克司』
村上克司 パイ インターナショナル ¥4,200+税
(2017年2月21日発売)


“超合金の父”として知られ、数々のスーパーロボットやヒーローの企画にも関わってきた村上克司。
その彼の初となる本格的なデザイン画集が本作である。
その収録されているキャラクターのラインナップだけでもワクワクさせられる1冊ではあるが、サブタイトルに「スーパーヒーロー工業デザインアート集」と銘打たれているとおり、“インダストリアルデザイナー”として村上克司を捉えた視点が非常に興味深い。

かつてはアニメや特撮番組の玩具といえば、まったく本編とは無関係なものが主流であった。例をあげるなら、レトロ玩具で目にしたことがあるとは思うが、なぜかヒーローが三輪車に乗っていたりするアレだ。

その流れに変革をもたらしたのが仮面ライダーの変身ベルトであるが、村上克司はロボットアニメにも“テレビ本編と同じような重量感と精密さを持ち合わせた玩具”の導入を志向。
それが超合金シリーズの第1作である『超合金マジンガーZ』として結実する。
それが“超合金の父”と呼ばれる所以なのだが、その後、より劇中のキャラクターと玩具との落差をなくすべく、番組の企画段階から関わっていくこととなるのである。

そして、もともとはカーデザイナーを志望していたという村上克司の出自もあって、多くのキャラクターやメカはインダストリアルデザインと同様に“構造から外観が決定される”という考え方にもとづいている。力強く明快なシルエットの魅力は、その成り立ちを理解することでより深く納得できるというものだ。

本作はそうした村上流デザインの原点にもスポットをあてた構成がまず意義深いが、これまで公式にはデザイナー不詳となっていたキャラクターも、村上克司の手によるものと明確にされている点にも注目したい。
あくまでポピーおよびバンダイの“社員”だったという立場もあり、これまで個人名がクレジットされなかったケースも少なくはないのだが、そのいくつかが村上克司の作品として日の目を見たのはうれしいかぎりだ。

というわけで、スーパーロボットやスーパー戦隊シリーズ、メタルヒーローのファンにとってマストバイであることはいうまでもないが、キャラクタービジネスのあり方を知るうえでも必読の1冊。
ひとまずは「ギャバンちょうカッケー!」などと熱くなるのが正統派の楽しみ方ではあると思うが、本作を手にすれば、なにかと“オモチャを売るための番組”などと悪く捉えられがちな側面も、そこに込められた真摯な思いや、あるいは商品の完成度を高め、番組を成功に導くことの重要性も見えてくるかもしれない。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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