日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『リトルウィッチアカデミア』

『リトルウィッチアカデミア』 第1巻
左藤圭右（画） TRIGGER/吉成曜（作） KADOKAWA ￥580+税
（2017年5月26日発売）

今年1月にテレビシリーズが始まり、たっぷり2クールかけて壮大な展開をみせたアニメ『リトルウィッチアカデミア』。
そのコミカライズ単行本の第1巻が発売中である。

本物の魔法を、きらめくイリュージョンのショーに応用して人々を楽しませた魔女、シャイニイシャリオ。
主人公・カガリアツコこと“アッコ”は幼少期にシャリオのショーを見て強烈な憧れを抱き、16才になって名門「ルーナノヴァ魔法学校」へ入学した。
魔女家系ではないアッコは魔法がからっきしの劣等生だが、ノリと勢いで様々な課題に挑んでいく。
その行動はいつも暴走気味で、寮のルームメイトになったロッテとスーシィを巻きこんで大騒動の連続だ。
しかし、どんなに問題児扱いされようと、アッコはいつか自分がシャリオのような素敵な魔女になれると信じて突き進む……。

アニメは元ガイナックス所属スタッフを擁して高い技術で刺激的な作品を制作し続ける株式会社トリガーの実力をあらためて確認できるものとなったが、「月刊少年エース」連載のコミック版も、活発に動き回るアッコの魅力をうまくマンガとして翻訳している。
手がけたのは『動物探偵まどかの推理日誌』の佐藤圭右で、メリハリのきいた描線と画面構成が既作からさらに進化して読みごたえがある。

内容は、テレビアニメ版の各話に準拠しつつ毎回途中から独自のシチュエーションになる、半・オリジナルストーリー。
たとえば魔女としてのシャリオの位置づけをめぐってアッコとライバルのエリート魔女ダイアナがぶつかるくだりはアニメにも同様のエピソードがあるが、そのあとマンガ版ではアニメにはない、バレーボール対決へとなだれこむ。
そこでアッコの奮闘する姿にシャリオの輝きを重ねて気をとられるダイアナ視点が鮮やかに織りこまれ、アニメでは最初ひそやかに煮詰められて終盤になってから掘り下げられた2人の関係性が、早いうちからわかりやすく示されている。
このダイアナの描き方がマンガ版の特徴のひとつなので、よく注目してほしい。

さて、予備知識として、『リトルウィッチアカデミア』というアニメのそもそもをおさらいしておこう。

始まりは、1本の短編アニメだった。
若手アニメーターの育成事業として文化庁から委託を受けた団体が2010年度より実施している「PROJECT A」……2011年度からは「アニメミライ」、2015年度から現在までは「あにめたまご」と称されるプロジェクトがある。
『リトルウィッチアカデミア』はもともと「アニメミライ2013」（2012年度）で発表された短編アニメを初出としている。

アニメミライ版がネット上で公式無料配信されると、躍動感あふれる作画と世界設定のポテンシャルに惹かれた視聴者が「まだいろいろやれるやろ！」と続編を熱望した結果、海外ユーザーを含めた支持の声がクラウドファンディング支援で実を結び、『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』（2015年）の制作と劇場公開が実現。
そこからさらに今年のテレビ版へとつながったという流れである。

ちなみに、劇場アニメ以降は脚本・シリーズ構成にベテランの島田満が参加しており、『ななついろ★ドロップス』『ジュエルペットてぃんくる☆』などでも発揮された児童文学ファンタジー志向が「リトアカ」の物語構造をがっしり支えている。
それもあってか、角川つばさ庫から『リトルウィッチアカデミア でたらめ魔女と妖精の国』というノベライズまで出ており、受け手の年齢を問わない、間口の広い作品に育てようとする企画レベルでの意気込みが感じられる。

この合間に、てりてりお作画の単刊コミカライズ、オリジナル要素が強い少女マンガ版が出ており、今回でマンガ化も3度目。
いろんな意味で、広がりと奥行きがある「リトアカ」ワールドの一環として読んでみてほしい。

＜文・宮本直毅＞
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』（総合科学出版）。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7