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『ポプテピピック SECOND SEASON』 大川ぶくぶ 【日刊マンガガイド】

2017/07/01


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ポプテピピック SECOND SEASON』

  
POPUTEPIPICK2ndseason_s

『ポプテピピック SECOND SEASON』
大川ぶくぶ 竹書房 ¥820+税
(2017年6月7日発売)


ポプ子は14歳の女の子。
ちんまり小柄でかわいらしいが、ことあるごとに血管ビキビキにキレてはサブカルかぶれの人間に容赦なく襲いかかる情熱家。

ピピ美も同い年の女の子。
高い身長、そしてアゴとノドの区別がつかない頭部の造形がチャームポイントの冷静なツッコミ役。

2014年に「まんがライフWIN」でWEB連載が始まってから1年弱のあいだ、この2人のキャラクターが多岐にわたるパロディや時事ネタの数々をぶちまけて話題を集め、しまいには版元の竹書房へ破壊行為を仕掛ける強烈なネタをもって“打ち切り”となった『ポプテピピック』

その著者・大川ぶくぶの新作は『☆色(ほしいろ)ガールドロップ』と題する作品で、なんと生粋のラブコメマンガである。

主人公は平凡な高校生男子。
両親の海外出張をいいことにのびのび過ごそうとした矢先、とつぜん幼なじみを自称する少女があらわれ、強引に同居生活を始めて大騒動。
この女の子、子ども時代に結婚の約束をした仲だといい張り、「私だよ私!!」とぐいぐい迫ってくるのだが主人公には覚えがない。

「私だよ 私だよ!!」

と、ヒロインが顔をどアップにしたところで、ページをめくるとそこには!

「私だよ!!!!」(バリィ)

で、出たー! “ザ・竹書房・デストロイヤー”ポプ子だーーーー!!

という流れで幕開けたのが、『ポプテピピック』の第2シーズンである。
別タイトルをつけて絵柄まで変えて、ミスリードしておいてからのひっくりかえしで読者を驚かせる趣向だったわけだ。

今回発売された単行本でも上記のネタは冒頭に収録されているが、『ポプテピピック』であることを承知で読むことになるので、まったく同じネタでもサプライズではなく逆に「よっ、待ってました!」と期待に応じるものになっているのがおもしろいところである。

さて、『ポプテピピック』という作品は、破天荒・シュール・無茶苦茶・とびっきりのクソ4コママンガ(公式)……などなどアグレッシブな形容詞で評されることが多い。
しかし、ネタ1つひとつをよく見かえせば、

 ・人気はあるが、そろそろ食傷してイラっときている人も増えてきた事物
 ・元ネタ作品そのものではなく、受け手ベースで2次的に乱用されているセリフ
 ・キレ芸の極端さによる茶番感
 ・なんだかんだで身内ネタ

といった具合に、ギャグの対象選びや演出のつけ方において、読者の好感をキープする気づかいをちりばめてあることが察せられてくる。
攻めるスタイルを心おきなく楽しませるためにこそ、足元はわりとかたく守っているのだ。

このマンガは、型破りな作品か?
答えはイエスだが、それは“型の破り方”がきっちり確立しているという意味において、ということになるのではないだろうか。

単行本で読むにあたり、いちどそのあたりのバランス感覚のよさも評価軸にくわえてみていただきたい。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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