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『ドリフターズ』第4巻 平野耕太 【日刊マンガガイド】

2014/11/21


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『ドリフターズ』第4巻
平野耕太 少年画報社 \571+税
(2014年10月27日発売)


関ヶ原の戦いで敗走する島津家大名を逃がすため、望んで捨て駒になった男・島津豊久。
彼が戦場で命を落としかけた矢先、突如、異空間への扉が開く。流れついた先はなんとエルフやドワーフ、獣人らが生きる異世界。
やがて同じく、時空を超えて漂着した歴史上の武人が続々登場。
戦国の覇者・織田信長と平安源氏の弓取り・那須与一は豊久を統領に立てて軍を興し、20世紀初頭アメリカの強盗団・ワイルドバンチは古代ローマの智将・ハンニバルを護送し、太平洋戦争の撃墜王・菅野直は戦闘機でドラゴンを落とす!
時代も国も武装もちゃんぽんな彼ら「漂流物ドリフターズ)」(が召喚された理由、それは人類廃滅を企てる邪悪な軍勢と戦うこと。だが敵の先陣に立つ怪人集団「廃棄物(エンズ)」もまた、歴史に知られた人物ぞろいで……。

歴史オールスター戦といえばSF畑で昔から人気のある題材だ(フィリップ・ホセ・ファーマーの小説『リバーワールド』シリーズなど)。
それを『ヘルシング』の平野耕太が描くとどうなるか? 首と国を奪ることに全身全霊をかける戦バカの、狂気に近い信念をすくいあげた超エキサイティングな物語に仕上がっている。

本作の見どころは、たとえば異種格闘技試合のように、根本的なギャップで盛り上げる作りだ。
史実の人物がファンタジー舞台に素のまま放りこまれる世界ギャップ。
出身時代・文化が異なる者同士が会話するたび生じる知識と技術のギャップ。
そして、戦うために生きる「漂流物」と殺すために戦う「廃棄物」の思考ギャップ。

特に最新4巻はそれがドラマティックに機能している。
島津豊久(薩摩、反徳川)と土方歳三(会津、新撰組、幕臣)の鬼気迫る戦いは近世日本史のうねりそのものが凝縮された図で、歴史ファン視点でも熱い。
シリアスからギャグまで隅々にキャラの背景をきちんと踏まえており、本作の読みごたえに刺激の強さだけでない深さを与えている。

ちなみに、関ヶ原を起点とする島津家と徳川の因縁については、みなもと太郎の歴史マンガ『風雲児たち』序盤が非常にわかりやすい。副読本としておすすめしたい。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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