『Q〔クー〕』第1巻
シヒラ竜也 集英社 \600+税
(2014年9月19日発売)
5pb.開発のアドベンチャー・ゲーム『ROBOTICS;NOTES』のコミカライズ作品『ROBOTICS;NOTES REVIVAL LEGACY』を手掛け、「若手実力派」と呼ばれるようになった漫画家・シヒラ竜也。
本作は、「ウルトラジャンプ」に連載されている、シヒラのオリジナル作品だ。
パッと目に入るのは、子供のあどけなさと、戦闘兵器も巨大な怪物をもむさぼり喰う末恐ろしさの混ざった、正体不明の美少女・クーの“ゾッとするかわいさ”だろう。
個人的には世界観も気に入っている。天空に浮かぶ巨大な眼球「ソラリス」。目があうと、その人間のいる場所へ「怪物(デミ)の卵」を落下させる。この世界では青空を見あげることは決してできない。
政府高官や富裕層は人工で空を造った「上層都市」に住み、一般庶民は外の世界で苦しむ。主人公の青年・芹沢レムも壊滅した都市で暮らすひとり。台場の旧TV局周辺の廃墟を根ぐらに、孤児を拾って養っている。
クーもはじめは普通の孤児だと思ったが……。
かなり絶望的な世界観ではあるが、主人公の男気あるキャラと、シヒラ竜也のみずみずしいタッチが相まって暗さはない。
まだクーとは心を通わす前の段階。クーは世界の救世主か、はたまたラスボスか。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
「The Differencee Engine」