『キヌ六』第2巻
野村亮馬 講談社 \590+税
(2014年7月23日発売)
星雲賞コミック部門にノミネートされた『ベントラーベントラー』の野村亮馬による、本格SFアクション『キヌ六』が完結した。
巻末には作者の言葉で、「話数もズバリ12話にせよとの指令を受け、そのように調整した次第なのです」とあるので、突然の打ち切りではないようだが、これだけ作り込んだ世界を全2巻(12話)という短さでたたむのは、あまりにももったいないというか、ぜいたくというか、大盤振る舞いというか。
キヌと六、2人ともっともっと“旅”を続けたかったというのが正直な感想だ。
舞台は、2001年の「沓京(とうきょう)」。地球で作り出された「火星人類」のコピーである少女キヌは、護送中に逃げ出し、ヌードル屋を営むサイボーグ少女・六と出会う。
2人は追っ手を撃退しながら、火星に行けるロケットが眠る場所を探す……。
猥雑な近未来的アジア都市は、リドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』を彷彿とさせる。
だが、1930年代に爆発的に生物化学が発展したという設定により、有機的といえばいいのか、本作独自の手触りが生まれている。肉体の限界を超越した過激なバトルシーンも、かえってフィジカル感を強く伝えてくる。
そして、この世界観に負けないだけの、キヌと六、タイプが違うそれぞれの魅力、キュートさにも驚かされる。
またどこかで、彼女たちと再会できる日が来るだろうか。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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