『透明のココロ』
琴葉とこ 秋田書店 \600+税
（2015年3月6日発売）

いじめ・鬱・不登校・友情・初恋……といった自らの実体験をベースに書き上げた『メンヘラちゃん』（中学生の時にWEBで発表していた4コマを全面改稿し書籍化）で注目を集めた著者の最新コミック。

こちらは現在大学生となった著者の日常を反映してか、7人の大学生が恋愛・友情・お洒落・勉強・将来の目標……に揺れ動く姿を描いた短編集となっている。

急にきれいになった女友だちに焦りや嫉妬を感じたり、ほのかに思いを寄せていた男子に「失恋中の俺を慰めてよ」なんて言われちゃったり、男子も男子で、終電を逃して泊めてくれた女友だちについついムラッときたり……。 どれも決して珍しくはない、ありがちともいえる出来事ばかりで、素朴でかわいらしい絵柄による人物らの心理描写も妙に生々しく、読んでいると自分自身の大学時代がふとフラッシュバック。

今になって振り返ってみれば、大学生の頃は「自分」というものが、よくも悪くもまだまだ固まってなくて、自信のなさと経験値の低さゆえに、友人とも恋人ともうまくコミュニケーションが取れず、悶々としていたっけ……と思わず目を覆いたくなると同時に、そんな悩みに翻弄される彼らが、ちょっとまぶしく見えたりもして。

現役大学生はもちろん、大人というにはまだ未完成で、でも子どもというにはいろいろ知りすぎたアダルトチルドレンな方々も、グッとくること間違いナシ。

「頭を抱えて悶える」押見修造先生の帯コピにピンときたアナタ、必読です！

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69