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『四弦のエレジー』第1巻 梅内創太 【日刊マンガガイド】

2015/05/07


YongennoElegy_s

『四弦のエレジー』第1巻
梅内創太 小学館 \552+税
(2015年4月10日発売)


現代音楽家のオリビエ・メシアンは共感覚の持ち主で、音を聞くと色を感じる能力を持っていた。
しかしこのマンガの主人公の片割れであるアリョーシャ・ブロイアーはそれをはるかに超え、音楽そのものが色どころか映像として“視える”少年だ。
曲を作れば、それはそのまま自分の周囲にムービーで再現される。リラの花が咲き鳥が空を舞い、音符さえも人の姿で踊り出すのだ。
だがそれは、他人には見えないためその能力はまったく理解されず、特に厳格な父親である大音楽家のユリウス・ブロイアーには病気とさえみなされている。

唯一、ユリウスの養子のエンリコだけが、アリョーシャと触れあうことでその映像を共有することができ、またアリョーシャの作曲の才能を認めていた。
エンリコは超絶技巧のヴァイオリニストで、その能力ゆえにユリウスにひきとられたのだが、ユリウスの作る曲しか弾かせてもらえず彼の傀儡も同然。
ある日2人は、父親にがんじがらめになった生活から飛び出し、一路音楽の都パリへと向かうのだが――。

この物語の舞台となっている19世紀末は、音楽史でいえば後期ロマン派も終わり、印象主義に差しかかってきたところだ。
ドビュッシーやラヴェルに代表される、フランス音楽が台頭する時代。自由で絵画的、雰囲気のある楽曲がどんどん生み出されていた。

作者のインタビューによると彼は音大出身で、ドイツ音楽に代表される形式的な堅苦しさがとても苦手だったという。
作中、アリョーシャがまず作ったのはドビュッシーの「リラの花」の模倣曲であり、また街頭演奏のために作った即興的な「卵のワルツ」も、人々に受けいれられやすい楽しく明るい曲。
古典的なドイツ音楽とは対極にあるものだ。

父親の牢獄から飛び出し、自由の国へ――。
音楽に縛られることから、音楽を愛し、自由に表現していく楽しさに目覚めた青年たちの姿を描いた作品のテーマは、そのまま人としての成長につながっていく。
とはいえ第1巻の展開を見ていくと、スムーズに進むわけではなさそうだが……。

「エレジー」は日本語で悲歌、哀歌などと訳される。
そんな単語をタイトルに持つ作品だが、個人的にはできることなら、この兄弟に幸せになってほしいと願う。

作者に音楽のしっかりした素地があるからこそ、マンガとしてどこまでそれを自由に表現してくれるか。
とても先が楽しみだ。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

単行本情報

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