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『糞神島 他』 水木しげる 【日刊マンガガイド】

2015/05/02


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『水木しげる漫画大全集 糞神島 他』
水木しげる 講談社 \2,200+税
(2015年4月3日発売)


「水木しげる漫画大全集」の第2期第3回配本にあたる本書。
双葉社の「週刊漫画アクション」に掲載された作品を中心に収録したもので、青年誌ゆえ、風刺の効いた娯楽作が中心。
単行本初収録となる作品も多く、水木作品はたいてい読んでる、という人もはずせない一冊だ。

目玉はなんといっても、野坂昭如の小説を原作とした「異色文芸シリーズ」。
野坂文学の漫画化といえば、滝田ゆうの『怨歌劇場』があり、あちらはさもありなんといったマッチングを見せている。
その点、水木しげるのトボけた画風は野坂文学(特にエロティック系)とはミスマッチ!? と思いきや、野坂文学の根底に流れる、猥雑な哀愁と乾いたユーモアが見事に表現されていて、なんとも味わい深い。

なかでも名作の誉れ高い『マッチ売りの少女』、野坂本人出演の『貧乏おそそ』と『猥談指南』あたりは、両者のファンならずとも必読!
表題作『糞神島』もナンセンスでぶっとんだストーリーのなかに、人間なんてしょせん、食って寝て糞して死ぬだけ――といった水木哲学がうかがえて、おかしくも深イイ。

お酒でも呑みつつちびちび楽しみたい、これぞ「オトナの愉悦」だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

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