日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！　今回紹介するのは『このマンガがすごい！comicsラーメン大好き！』。

『ラーメン大好き！』
久住昌之（作）水沢悦子（画）／うえやまとち／土山しげる／魚乃目三太／イシヤマアズサ／藤子不二雄A／松本零士／石ノ森章太郎 ほか
（2015年9月12日発売）

「オヤジ ラーメン一杯」
「俺もだァ」

仕事帰り、居酒屋で一杯やったあと、無性に食べたくなる「ラーメン」。
『このマンガがすごい！Comics ラーメン大好き！』には、いわゆる「食マンガ」のラーメン話はもちろんのこと、それ以外にもあらゆるジャンルの作品で登場するラーメンマンガが網羅されている。

まずなにがすごいって、掲載されている作品ラインナップ！
『このマンガがすごい！2012』オンナ編第1位『花のズボラ飯』
グルメマンガのヒットメイカー・土山しげるの『極道めし』『怒りのグルメ』の2本立て
アニメ化・ドラマ化もされた大長編グルメマンガ『クッキングパパ』
松本零士の不朽の名作『銀河鉄道999』
このほかにも、 『しあわせごはん』魚乃目三太
『ぶかつ麺！』ボブ吉村（作）吉田 健二（画）
『真夜中ごはん』イシヤマアズサ
『大市民』柳沢きみお
『小池さんの奇妙な生活』藤子不二雄A
など、星の数ほどあるグルメマンガから、「このマンガがすごい！」編集部が厳選した、超豪華なラインナップが並んでいる。

個人的なオススメは、魚乃目三太『しあわせごはん』だ。
なんといっても、麺をズルズルっとすすった感触、口のなかで旨味が広がった瞬間の描写が秀一。
読んでいるときは、まるで自分がいま世界で一番うまいラーメンを食べているかのような充実感にあふれているのに、読み終わった瞬間、「ああ、今ラーメンを食べないでいつ食べるんだ」という気持ちにさせられる。
もうこの際カップラーメンでも、近所のラーメン屋でもなんでもいい。いまならどんなラーメンだって、世界一おいしいラーメンとして食べられる、そんな高揚感が得られる作品だ。

ラーメンにまつわるエピソードが興味深い作品としては、トリにひかえる石ノ森章太郎の『トキワ荘のチャルメラ』をオススメしたい。
「トキワ荘」というのは、巨匠・手塚治虫に憧れて漫画家をめざし、後に大成する若者たちがかつて住んでいたアパートのこと。入居者は、兄貴格の寺田ヒロオを筆頭に安孫子素雄（のちの藤子不二雄Ａ）、藤本弘（のちの藤子・Ｆ・不二雄）、つのだじろう、石ノ森章太郎、赤塚不二夫とそうそうたるメンバー。そのなかには「ラーメン大好き小池さん」のモデルである鈴木伸一もいたというのだから驚きだ。
本作には、主人公（著者・石ノ森がモデルのキャラクター）たちが、まだ貧乏生活を送っていた頃のラーメンの思い出が描かれている。屋台のラーメンが一杯45円。ちょうどインスタントラーメンが世に出た頃であり、当時の時代風景やトキワ荘のメンバーたちの人間性がかいま見えるのも本作の魅力ではないだろうか。

ああ、なんだかラーメンが食べたくなってきた。
本書のためのラーメンの食べすぎで、体重が増えてしまってしまっても、「このマンガがすごい！」編集部では責任はとりませんので、あしからずー。

＜文・富士見大＞
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』（ヒーローズ）ほかに参加する。ただいま好評発売中の『バケモノの子 オフィシャルガイド』、「『仮面ライダードライブ』フォトブック～Drivin’Album」もやってます。