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【日刊マンガガイド】『恋と病熱』 磯谷友紀

2014/07/31


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『恋と病熱』
磯谷友紀 秋田書店 \680+税
(2014年7月16日発売)


複数の子どもをもうけること、すなわち“きょうだい”という存在がタブー視される……そんな時代の兄弟姉妹の絆を描いた、6つの物語。

この設定は突拍子もなく感じるだろうか?
いやいや、中国の「ひとりっ子政策」を例に出さずとも、考えてみればさほど遠くない昔、日本でも国をあげて「生めよ増やせよ」を推奨した時代だってあったわけで。なにかをきっかけに、その反対が起こるかもわからない!

本作の世界では、2人目の子どもが生まれてしまった場合、子供のない家庭に養子に出すことが常。
そして、そのことはひた隠しにされるのだ。

1話目の主人公・クロエは、自分に兄がいることを知って、激しく嫌悪感を抱く。
じつは同じ学校に通っており「会ってみたかった」と接近してきた兄を、当初は拒絶するのだが、何度か言葉をかわすうちに不思議な“居心地のよさ”を覚えていく。

家族とは、はなから愛するも愛さないもなく、切りようもない絆でいやおうもなくつながれたもの。
同じ家庭で育っても犬猿の仲だったり、友だちのように気が合ったり……年上の者が保護者的になる場合もある。異性のきょうだいに恋心に近い想いを抱く人もいるだろう。“きょうだい”の関係性は、親子よりもさらに多様かもしれない。

そんな関係性のなかに、もともと近づくことを許されない社会状況……という条件が加わった際に生じる、複雑な気持ちのタペストリーを、じっくりと眺めてみてほしい。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ド少女文庫

単行本情報

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