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『天久鷹央の推理カルテ』 第1巻 知念実希人(作) 緒原博綺(画) 【日刊マンガガイド】

2016/10/15


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『天久鷹央の推理カルテ』


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『天久鷹央の推理カルテ』 第1巻
知念実希人(作) 緒原博綺(画) 新潮社 ¥580+税
(2016年9月9日発売)


累計で40万部の売れ行きを誇り、「新潮文庫nex総選挙2016」の男性部門第1位に輝いた「天久鷹央」(あめく・たかお)シリーズの第1作をマンガ化したのが、本作『天久鷹央の推理カルテ』第1巻である。

主人公の天久鷹央は、天医会総合病院の統括診断部の診療部長を務める女医である。
鷹央は、病院の屋上に建てられた西洋風の平屋建ての建物に住み、統括診断部の診療もそこで行っている。
天医会総合病院は、東京都東久留米市全域の地域医療を担う、病床数600を超える病院である。
その巨大組織のなかで、鷹央が27歳の若さで、その地位にあるのは(しかも、病院の屋上に住むなんて無茶ができるのは)理事長の娘という血筋もあるが、集中力、記憶力、計算能力など超人的な能力を持っているからでもある。
統括診断部とは、内科、外科、精神科といった診療科の垣根を越えて、診療が困難な患者を診るために設立された部である。鷹央の判断により、治療困難だった患者が回復することを歓迎する医師もいる反面、自らの診断を否定されたことで、その存在を嫌う医師もおり、鷹央の立場はじつは微妙なのである。

鷹央と、そのたったひとりの部下である内科医見習いの小鳥遊優(たかなし・ゆう)(♂)が、様々な「事件」に巻きこまれて、というのが、本シリーズの基本パターン。
第1巻で登場する謎は、池にカッパが出現した、あるいは病院で人魂が出た、といった怪談めいたものから、中絶手術後自宅に軟禁されていた女子高生が再度妊娠した、という「処女懐胎」を思わせるものまでバラエティに富んでいる。そうした謎も、鷹央が医療の知識を活かして鮮やかに解決していくのである。

本シリーズの原作者の知念実希人は、2011年に第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を『誰がための刃 レゾンデートル』で受賞しデビュー。
医師として勤務しながら、ミステリー作品を発表している新鋭作家である。
職業を通じて得られる医学的知見は、本シリーズでも、作品世界にリアリティを持たせ、かつ魅力的な謎を生み出すかたちで活かされている。また、作画の緒原博綺は、アニメ作品のコミカライズ『バディ・コンプレックス』(全2巻)を手がけた新鋭。
緒原は、原作小説で表紙絵・挿画を務めた、いとうのいぢの絵柄を活かしつつも、より大人っぽい雰囲気で鷹央を描いている。

第2巻では、原作どおりにストーリーが進捗するのであれば、鷹央は医療過誤で訴えられ、統括診断部の縮小案が病院内で持ち上がり、と鷹央と小鳥遊コンビはトラブルに巻きこまれ、鷹央は病院長である叔父・天久大鷲(あめく・おおわし)と対決する――となるはずなので、乞うご期待である。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。、「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。

単行本情報

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