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『わたしは真夜中』第3巻 糸井のぞ 【日刊マンガガイド】

2015/09/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは『わたしは真夜中』


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『わたしは真夜中』第3巻
糸井のぞ 幻冬舎 ¥660+税
(2015年8月24日発売)


眠れない勤労青年・池端くん(19歳)と、バツイチ図書館司書・とばり(31歳)の“添い寝”から始まった恋。
年の差もものともしない相性の良さで順風満帆に思われたが……。とばりと別れた夫、息子との絆も揺るぎないものがあることに、池端は不安を募らせる。はたしてとばりの選択は……? 

とばりは、はたから見ればじつに多くのものを持っている女性だ。
元夫である久志に“捨てられた”と思っているにしろ、彼は中学時代からのつきあいだけあって、今も変わらずにとばりの良き理解者であり続けている。
一人息子の聖は幼いながらにものわかりがよく、一定の距離を保ちつつまっとうに愛情を表現してくれる。聖の母代わりを務める久志の母も、女友だちのように気のおけない関係ときている。

さらには図書館司書という好きな仕事でキャリアを積み、経済的にも自立していて。
自分の立場をわきまえながら、間違いない配分で愛情を与えることを知っている。そんなとばりのバランスのよさが、若い池端には理解できなくても当然だろう。

最終巻では、とばりの意思を尊重してきた久志、池端――2人の男たちの、ここぞとばかりに表出する心情が読みどころ。
おっと、もうひとり忘れていました……息子の聖くん。年のわりには大人びた彼が自分を主張するくだりも、とばりの背中を押すことに一役買っている。
変わらないでいることは、気楽で心地いい。だけど、結局は変わらないものなんてない。移り変わる状況のなかで、自分はどうありたいのか、そのつど決めていかなければならない……クライマックスの、とばりの本音はまさに、新しい道を開く魔法の一言だ。

ところで、聖くんは、おそらく本作のひそかな人気キャラであろう。この少年の言葉を追っていると、理屈があるから感情もあるということがよくわかる。
“個人主義”な両親の資質を受けついでか小学校では友だちがいないようだけど、唯一心を通わせるキララちゃんとのやりとりがいちいち味わい深い。
ぜひ2人を主人公にした続編を読んでみたいものだ!



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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