日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『それでも町は廻っている』
『それでも町は廻っている』 第16巻
石黒正数 少年画報社 ¥575+税
(2017年2月14日発売)
いい加減なノリでつくった、メイド喫茶シーサイド。
バイトをしているミステリー好き女子高生・嵐山歩鳥を中心に起きる出来事を、町内規模から、ときに現実かどうかわからない世界規模まで描く、青春探偵ごっこ群像劇。最終巻だ。
この作品は時系列がシャッフルされており、冒頭から最後までが一連の流れになっていない。
シャッフルされたことで、歩鳥の成長と、周囲の人間関係の変化が俯瞰して見られる。
125話では、もっともつるんでいることの多い高校の紺先輩が、すでに大学に入って夏休みに。
歩鳥もすっかり成長して交友関係が広がっている。
ふわふわ浮ついていた会話の内容も、すっかり落ちつきがでて、過去のことを振りかえるようになってきた。
127話、歩鳥3年生の夏。とても大きな動きが物語上で起こり、ひとつケリがつく。
けれども、それは終点ではない。
歩鳥はいう。
「なんか……あんまり変わんないね」
すべての話がメビウスの輪のようにつながっている。
ハッピーエンドもあれば謎のまま終わる話もたくさんあった。
ひっくるめて、この町の、歩鳥の高校3年間の出来事だ。
前の巻に戻ったり、飛ばして続きを探して読むのが、とても楽しい。
順番は会話や服装、髪型などを見ればわかる仕組みになっている。
収録されている「エピローグ」。
人生の岐路が描かれているものの、それは今までのことと地続き。
歩鳥の成長はあっても、何もかも変化したというわけではない。
終わるのではない。“廻って”いる。
なお、著者による実際のタイムテーブルは『それでも町は廻っている 公式ガイドブック廻覧板』に収録されている。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」