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『新テニスの王子様』第20巻 許斐剛 【日刊マンガガイド】

2017/04/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『新テニスの王子様』第20巻


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『新テニスの王子様』 第20巻
許斐剛 集英社 ¥438+税
(2017年3月3日発売)


テニスの名門校「青春学園」の中等部に入学した天才的テニスプレイヤー・越前リョーマが、部活の仲間とともに少年テニス界の頂点を目指して強豪校としのぎをけずる『テニスの王子様』。

数々の奇想天外な必殺ショットや常識破りのメンタルコントロール技能のぶつけあいを描いて少年マンガの醍醐味を味わわせてくれた前作は、単行本全42巻をもって全国大会編を終了し、掲載誌を「週刊少年ジャンプ」から「ジャンプSQ.」へ移籍した続編『新テニスの王子様』も、気づけば20巻目という大台に乗った。

第18巻から始まったU-17ワールドカップ本戦は、日本代表が格上のギリシャにいったん追いこまれつつも、持ち返して第1戦を勝利。
そして最新巻では、第2戦、対オーストラリア戦へ移り、幸村・真田ペアのダブルスの苦戦と奮闘が描かれる。

相手はなんといってもこの大会の開催国チーム。
会場はすべて地元オーストラリア応援客の大声援で埋め尽くされ、日本チームにとっては超アウェイ状態だ。
異様な空気からくる心理的な圧力に加えて、オーストラリア側のペアは徹底したコートカバーからカウンターを返すスタイルであるため、攻めづらいことこのうえない相手である。
この難しいシチュエーションで、真田がみせる精神的な強さ、そしてボールをオーラに包むことで打ったあとに軌道を二度も曲げる「黒龍二重の斬」の頼もしさに注目してほしい。
一方、オーストラリアペアも負けず、アイアンウォールの異名を持つ鉄壁のフォーメーションで対応、最終的には守備対守備の持久戦へともつれこむ。 明暗を分ける鍵は、幸村と真田の原点ともいえる幼少期の記憶。
どんなに苦戦しても「絶対にあきらめない」という、シンプルで、しかしすべての支えとなる気持ちの共有だ。

『テニスの王子様』シリーズは必殺技の設定や演出の勢いこそブっとんで派手ながら、主要人物がテニスというスポーツにかける情熱の描き方は、前作も今作も“泥臭い”という形容が似合う誠実なものなんだよなあ、と、物語のコアを再確認できる巻になっている。
主人公以外のキャラクターでもそうやって作品の支柱に触れるドラマを組めるのは、群像劇の強みであり奥深さですね。

以下余談。
今回、巻末のおまけで、作中屈指の人気キャラ・跡部の在籍する氷帝学園中等部3年A組のクラス名簿をつくるという企画のもと、応募読者の氏名一覧がずらずらずらーっと並ぶコーナーが収録されている。
そのボリュームたるや、なんと1万人以上、50ページ超!
いったいどんな規模のクラスだよ!?
と思わずひっくりかえってしまうも、跡部「王国(キングダム)」ですもんね……。納得するしか!



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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