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5月29日はG・K・チェスタトン(批評家・推理小説家)の誕生日 『パタリロ!』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/05/29


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

5月29日はG・K・チェスタトンの誕生日。本日読むべきマンガは……。


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『パタリロ!』 第50巻
魔夜峰央 白泉社 ¥390+税


5月29日は、イギリスの推理小説家・批評家G・K・チェスタトンの誕生日。
1874年生まれのチェスタートンは、コナン・ドイル(1859年生)、アガサ・クリスティ(1890年生)のちょうど間にあたる世代で、ミステリ草創期の礎を築いた作家である。チェスタートンという名前より、名探偵「ブラウン神父」シリーズの著者といったほうがとおりはいいかも!?

ここで紹介する『パタリロ!』はご存じのとおりマニアックなネタがたくさん織りこまれたギャグマンガだが、SFや時代劇、怪奇、ミステリー風味のエピソードも多い。
そもそもバンコランの名前も、これまた古典ミステリの雄、ジョン・ディクスン・カーの創作による名探偵からの引用であることは熱狂的なファンにとっては常識だ。
パタリロ自身「世界名探偵友の会」の正会員であり、世界中の事件に介入できる権利を持っている……なんて設定も。

パタリロは変装を得意とするが、“シバイタロカ博士”(シュバイツァー博士の親戚という白衣の老人)と並び印象深いのは、ブラウン神父を彷彿とさせる出で立ちの “フリッツ・フォン・マンテル博士”。黒い半球型の帽子に丸眼鏡、足もとまで隠れる黒い服はどこから見てもブラウン神父そのものだ。
フリッツ・フォン・マンテル博士は世界的犯罪者という設定だが、あえてメジャーなホームズの装いを使わないあたりがマニアック!
ちなみにフリッツ・フォン・マンテル博士の初登場は単行本第2巻所収のエピソード「パタリロ大混戦」。
この回はマライヒの初登場でもあり、また魔夜が同時期に連載していた『ラシャーヌ!』がゲスト出演してパタリロと丁々発止を繰り広げるのも楽しい名編である。

『パタリロ!』には本格ミステリ風の作品があるが、ここで「一週間は七日」(単行本第50巻所収)という作品に触れてみたい。
パタリロはある美女の殺害事件に関わるが、彼女の葬儀には恋人を名乗る男たちが続々と現れる。6人の男たちはお互いの存在を知らず、それぞれ決まった曜日にしかデートできなかったことがわかるが、「水曜担当」の男だけがいない。
犯行の日は水曜日、となると犯人は水曜日の男なのか!?

オチは違えども、本作はチェスタートンの『木曜の男』にインスパイアされた作品ではないかと筆者は推測する。『木曜の男』は曜日のコードネームを持つ7人による秘密結社を舞台としたミステリ。
主人公の〈木曜日〉はスパイとしてこの組織に潜入するのだが……それぞれのメンバーの正体が次第に明らかになっていくスリリングな展開がじつに読ませる。
ブラウン神父モノではないが、こちらもおすすめの1作だ。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

  • 『パタリロ!』 第1巻 Amazonで購入
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  • 『パタリロ!』 第50巻 Amazonで購入
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