日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『レッドマン・プリンセス ―悪霊皇女―』
『レッドマン・プリンセス ―悪霊皇女―』 第1巻
高遠るい 秋田書店 ¥600+税
(2018年1月19日発売)
第9代アメリカ合衆国大統領、W・H・ハリソン(1840年選出)、選出の翌年病死。
第16代、A・リンカーン(1860年選出)、65年に暗殺される。
第20代、J・ガーフィールド(1880年二期再選)、選出の翌年に暗殺される。
第25代、W・マッキンリー(1900年選出)、選出の翌年に暗殺される。
第29代、W・ハーディング(1920年選出)、23年病死。
第32代、F・ルーズベルト(1940年 三期再選)、45年急死。
そして第35代、J・F・ケネディ(1960年選出)、63年に暗殺される。
じつに200年にわたって7人もの大統領たちが在任中に死去している。
この「20の倍数の年に選出された大統領」たちはいずれも同一の戦士が暗殺してきた……。そう、白人により蹂躙された「赤き民(レッドマン)」ショーニー族の最後の戦士・テカムセによって。
なお1980年選出のロナルド・レーガン、2000年選出のG・W・ブッシュの2人はどちらも任期を満了した。ゼロ年の呪いと呼ばれた現象は長い前兆にすぎなかったのだ。力を蓄えたテカムセの魂は、極東の島国の皇女の身体に憑依して、新たな戦いの火蓋を切って落とした! 日本国は、そしてアメリカは、この未曾有の怨霊による侵攻をどのようにして迎え撃つのか。そして皇女の親友・クリスは……?
高遠るいの放つ最新作、今一部で熱く話題になっている陰謀オカルト近未来アクション『レッドマン・プリンセス ―悪霊皇女―』。
各方面に中指を硬く突き立てる描写の数々に連載そのものが「在任中に暗殺」されるんじゃないかと心配になるが、ことの成りゆきを見守ることしか我々にはできないのだろうか。
なお、もし本作で著者の魅力に初めて触れたという読者がいたら、以下の作品をオススメする。
2003年連載が開始されたアクション青春劇『CYNTHIA THE MISSION』全9巻。
女子高生でありながら、じつは香港の暗殺者組織に属してもいる主人公が日本に転校してきて繰り広げる、暴力と流血に彩られた作品。
2007年連載開始の、濃厚な特撮愛から壮大稀有なSF展開をみせる女子校劇『ミカるんX』全8巻。
そして本作『レッドマン・プリンセス ―悪霊皇女―』と並行して現在連載中の『はぐれアイドル地獄変』(既刊6巻)。
これはグラビアアイドルのブラックな労働状況を描くと見せかけて、そのじつやっぱりハードな肉体表現(エロスとバイオレンスの双方で)が炸裂する作品で、2014年に連載開始。
現代を代表するトリックスター的漫画家、高遠るいが繰り出す社会的実験の行く末を刮目して見よ。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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