夜の太鼓
山川直人 KADOKAWA ¥734
(2014年4月25日発売)
『シアワセ行進曲』『ナルミさん愛してる』『コーヒーもう一杯』など、自主制作・商業出版を問わず本棚に残る珠玉の名作を手がけてきた作者の最新作。
人の役に立つために超能力者になろうとする少女が震災を経験する『エスパー修業』を筆頭に、収録された3作すべてが物語上にダークな要素を内包している新境地的な作風で、今までの作品と比べて、読んだあとにハッキリと頭の中に「重さ」が残る仕上がりに。
磨き上げられたガラス玉のような“寓話”の中に、ある種のサブカルチャー論(しかも否定的な)を感じる表題作『夜の太鼓』は、個人的にも山川作品の中でトップクラスのお気に入り。真夜中に読みましょう。
<文・大西祥平>
マンガ評論家、ライター、マンガ原作者。著書に『小池一夫伝説』(洋泉社)、シリーズ監修に『ジョージ秋山捨てがたき選集』(青林工藝舎)。