『新装版 2001夜物語』第1巻
星野之宣 双葉社 600+税
1896年11月27日、フランクフルト。ドイツの作曲者・リヒャルト・シュトラウスが指揮をする第4回ムゼウム協会コンサートにて、同年に彼が作曲した交響詩『Also sprach Zarathustra』が初めて上演された。 日本語訳すると『ツァラトゥストラはかく語りき(こう語った)』となり、この曲がフリードリヒ・ニーチェの同名の著作にインスピレーションを得て作曲されたことがわかる。
この曲がクラシック音楽のファン以外にも広く知られている理由は、なんといっても1968年公開の映画『2001年宇宙の旅』での使用といえるだろう。
映画冒頭部で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による第1部「導入部」が使われている(ちなみに当時の指揮者はヘルベルト・フォン・カラヤン)。
とりみきの『キネコミカ』をはじめ、『2001年宇宙の旅』をオマージュしたマンガは少なくないが、今回紹介する作品は、星野之宣『2001夜物語』だ。
各エピソードのタイトルに、古典SFのタイトルが冠された本作、題名は『2001年宇宙の旅』と『千一夜物語』のミックスで、冒頭部にも『2001年宇宙の旅』を思わせる描写が見受けられる。
その内容は、20世紀から24世紀ごろまでの宇宙と人類のありかたを描いた壮大なSF叙事詩。人類が宇宙に進出して、太陽系外へと乗りだし、さらにその先へと地球外文明を追い求めながら、彼ら自身も新たな進化をとげていく様子が描かれる。
英語版をはじめ、多くの翻訳版が出版され、世界的な評価を受ける骨太な本格派。この機会に読んでみてはいかがだろうか?
BGMはもちろん、『ツァラトゥストラ』で。
<文・富士見大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。