『インディゴの夜』第1巻
加藤実秋(作) 白木苺(画) 中村朝(構成・背景設定)
スクウェアエニックス \562+税
(2015年5月20日発売)
クラブ・インディゴ。
店に入ればすぐに、私服の男の子たちがわらわらと出迎えてくれるはずだ。
アフロ、マッシュルームカットにオーバーオール、ハーフで身体めっちゃ鍛えてる奴や、草食系黒ブチ眼鏡もいる。服装もスタイルも、個人の自由そのもの。
でもここは、れっきとしたホストクラブなんです。
『インディゴの夜』は、加藤実秋の人気ミステリシリーズの第1作目。
クラブ・インディゴで起こる様々な事件を、ライター兼クラブ・インディゴのオーナーである高原晶(たかはら・あきら)が探偵役となって、さらにホストたちの活躍で解決していくストーリーだ。
原作者自身が、このシリーズのエッセンスを語った言葉がある。
「友だちの友だちが経験したっていう、ちょっとウソ臭いけど飛びきりスリリングな出来事」
そう、自分と関係があるような、ないような、でもどこか身近で、心から笑えて泣けてドキドキできる、そんな素敵な距離感のエピソードが満載なのだ。
TVドラマ、舞台化に続いて、今度はコミカライズと、その作品力の高さがうかがえる。
小説は、主人公・晶の一人称で描かれているが、その語り口のテンポがじつにいい。
晶を代表とする昭和世代、それに対するイマドキのホストたち。
その時々の風俗の取り入れ方が絶妙で、あるあるとツッコミながら楽しく読めてしまう傑作だ。
いっぽう今回のコミカライズでは、白木苺のおしゃれな絵柄もあって、特にホストたちの魅力がパワーアップしている。
さて事件は、最近ずっとVIP席に陣取り続けている2人の若い女性たちから始まる。
『天使のごほうび』という本をヒットさせたライターの若葉と、そのプロデュースをした編集者のまどかだ。
店のナンバーワン、ツーであるTKO(タケオ)とジョン太をはべらせ、バカ騒ぎをする毎日。
ところがある日突然、まどかが殺されてしまった。第一発見者となったのはTKOだ。
彼は、まどかがずっとストーカーにつけ狙われていたと言うが、ホストクラブの客が殺され、発見者が指名ホストとなると、もちろんTKOに疑いがかかるだろう。
TKOは自分ではないと言い張るし、店としても真犯人が見つからない限り、TKOの容疑は晴れない。
――そこで、晶とホストたちの出番とあいなるわけだ。
表紙のポップな4人は、クラブ・インディゴのメインホストたち。
ジョン太、DJ本気(マジ)、犬(いぬ)マン、アレックス。
小説の頃から目立ちまくっていた彼らだが、いっそうかっこよく味つけされ、さらにときめくキャラにクリーンナップされている。
マンガだと彼らの活躍がよりわかりやすく、原作派でも改めて好きになってしまうに違いない。
本編のコミカライズだけでなく、笑える短編「ゆるホス」に、原作者加藤実秋の書きおろしショートショートまでついた充実の1冊。
筆者も原作からの読者のひとりだが、コミック版でさらにDJ本気が好きになりました(笑)。
また小説だとあとの巻から出てくるキャラだが、昼担当の手塚くんがさらっと登場してるのも心憎い。
原作小説のファンでも初読でも楽しめます。ぜひご一読のほど。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」