働かないふたり 1
吉田覚 新潮社 ¥540
(2014年5月9日)
名短篇集『12連休』の記憶も新しい吉田覚の最新作。
対人恐怖症の妹と、秀才でありながらなぜか働かない「エリートニート、略してエニート」な兄、2人の社会不適合者をめぐる、怠惰にまみれたゆるふわな日常を描いたコメディだ。
もともとこの作品は著者の個人ブログで趣味的に公開されていたものであり、そのほとんどが(web漫画らしい)5P以下の、極めて短い掌編で占められている。そのため、コンパクトにまとまったネタをサクサクとしたテンポで読み進められるのが特徴だ。
ストーリーは、一応時系列順に進んでいるようではあるものの、引きこもり生活特有の時間感覚のなさからそれを計ることは難しい。
季節感やイベントとは無縁の状況が延々と繰り返されるその様は、昨今流行の学園日常漫画なども裸足で逃げ出す「終わらない日常」の極北とも言える内容である。
空いた時間に適当な10ページだけ読める、よい意味で「暇つぶしに最適な一冊」といえるだろう。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。