『エニデヴィ』第3巻
白浜鴎 KADOKAWA ¥620+税
(2015年7月15日発売)
心根は優しいが行動は自由奔放、自分の気持ちに正直に生きる天使のエニエルと、一見態度は悪いが、性根はきまじめでしっかり者な悪魔のデヴィエラ。
敵対する種族なのに、なぜだか不思議とウマが合い、何かとつるんでいる2人。
そんなおかしな美女コンビが地上で巻き起こすトラブルを、美麗なタッチで描いた上品なコメディの最終巻。
いつもの調子で妙ないたずら心を起こし、デヴィエラの持っていた悪魔の薬で、自分の羽根を増やしてしまったエニエル。
天使にとって羽根の枚数は、地位の高さと、それにともなう力の強さの象徴であり、そのままにしておくと彼女は、上位の天使としての多忙な職務にかりだされてしまう。
かくして彼女は、羽根を落とすための高額な薬を手に入れるため、かつて助けた人間の少女に知恵を借り、天使の力を使ったアコギな商売に手を出すのだが……。
そんなエピソードを皮切りに、この巻で2人は、過去最大級のスケールのトラブルを巻き起こす。
しかし、どれだけ壮大な規模になろうとも、根本にあるのはとてもミニマムな、きわめて等身大の感情。それがいい。
願わくば、ゆかいな2人に、また何かの機会にお目にかかりたいものである。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei