日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『城下町のダンデライオン』
『城下町のダンデライオン』第3巻
春日歩 芳文社 ¥819+税
(2015年8月27日発売)
両親(総一朗、五月)と三男六女(葵、修、奏、茜、遥、岬、光、輝、栞)の11人家族+猫からなる櫻田家は一見、なんの変哲もない街中の一軒家に住む平凡な家庭に見えるが、じつは王家の一族で特殊能力者一家。
国王である父の意思により3年後、9人の子どもたちのなかから国民投票で後継者を決めることになっている。
街中に設置された監視カメラの映像がTV放映される環境のなか、まだ10代の兄弟姉妹は学生生活と平行して、特殊能力を操りながら選挙活動に取り組んでいくが――。
そんな大家族の模様を描いたドタバタコメディ4コマが『城下町のダンデライオン』だ。
最新第3巻では、国民投票の時期がせまってくるなか、父と母、遥と岬、修と花および修と奏、桜庭らいと(光のアイドルとしての姿)と米澤紗千子といったように、人物同士の関係性にフォーカスすることで、それぞれのキャラクターをより深掘りするエピソードが並ぶ。
本作をめぐっては、どうやらその登場キャラの多さにとっつきづらさを感じる人もいるようだ。
しかしそんな人にこそちょうどいい。2015年7月~9月に放映されていたアニメ版を見れば、その判別が容易なため、今こそ読みはじめるベストタイミングと言える。
アニメはラストこそオリジナル展開でまとめられているが、(多少の設定の変更こそあれ)おおよそ原作に忠実で、ちょうどこの第3巻の途中まで描かれた。
アニメ版を観た人であれば、この巻からでも違和感なく読みはじめることができるはずだ。
あわせて、著者である春日歩は、立体的で被写界深度の浅く設計された、カラーページにおける塗りやエフェクトが魅力的な作家なだけに、グレースケールでの単行本収録がたいへん惜しまれる。
アニメ化を期にそれらも収めたファンブックの刊行にも期待したい。
<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』(アニメルカ×マンガルカ×ジャズメルカ)主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
TwitterID:@ill_critique
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