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『怪獣の飼育委員』第1巻 島崎無印 【日刊マンガガイド】

2015/11/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『怪獣の飼育委員』


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『怪獣の飼育委員』第1巻
島崎無印 芳文社 ¥590+税
(2015年10月13日発売)


女子中学生ならではのかわいさを描くには、やはりでっかくて、いかついやつがいい。
あとがきで「女子中学生が怪獣を愛でるだけの漫画があったっていいじゃない」と書かれている。まったくそのとおり。
でも「だけ」ではない。世界の終末に足をつっこみかけたSF描写があるから、女の子の存在感がいっそう引き立っている。

1999年、地球の各所に出現した異生物、怪獣。
人類の脅威になりかねない彼ら。研究の結果、特定の音声パターン、特に少女の声に反応し、凶暴性が抑制されることが判明。
学齢期の女子のなかから適性のある者が「対怪獣特殊技能者」として育成されることになった。
と言っても、基本的には一般的な中学校とほとんど変わらない。
たまーに学校で、歌を習って、怪獣の世話をする程度。

出てくる怪獣たちは、おだやかなものが多い。
一番大きなブルーは、ちょっと暴れたら学校くらい簡単に壊してしまいそうだ。しかし適性が高い少女・日高唯音(ひだか・いおん)になついていて、まったく暴れない。
怪獣たちはまったくしゃべらないので、何を考えているのかはわからない。とりあえず生徒たちに一番近いブルーは、特に唯音を積極的に鼻の上に乗せてくれる。

委員長の宮山月子(みややま・つきこ)を見ると、怪獣と人間の距離感がわかりやすい。
とてもまじめで、学術的観点から怪獣に接しようとする委員長。客観的であろうとするクールビューティ。
じつは彼女、めちゃくちゃ怪獣が好き。仲よくなりたくて仕方ない。
けれども、怪獣がなついてくれるかどうかは、別問題。なかなか怪獣は彼女を好きになってくれない。
こっそり彼女が拾って、愛情を注いでいた怪獣が死んだかのように見えた時、委員長として処分のしかたを指示しながら、ただただ涙した。
怪獣は敵ではない。共存すべき相手だ。けれど意思の疎通は困難だ。

怪獣が出現した旧市街は、廃墟化している。
街が壊滅するくらいに大きな事件が起きたのだとしたら、怪獣の出現と共存は、世界規模の大きな問題として、女子中学生たちの背中にのしかかってくる。
とはいえ、目の前の怪獣とのコミュニケーションで精一杯な彼女たちの、ミクロな視点を描くことに特化しているからこそ、本作はゆったりした気分で読むことができる。

歌と怪獣といえば、合唱曲「怪獣のバラード」を思い出す。
ブルーをはじめとしたもの言わぬ怪獣の行動。
彼らも「人を愛したい」のかもしれない。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

  • 『怪獣の飼育委員』第1巻 Amazonで購入

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