365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月30日はゲゲゲ忌。本日読むべきマンガは……。
『わたしの日々』
水木しげる 小学館 ¥1,296+税
2015年11月30日・午前7時18分、東京都内の病院で水木さん(水木しげる)がこの世を去った。享年93歳。
日本人男性の平均寿命が約80歳だから、一般的に考えれば大往生である。しかしファンたちはみな、思い描いていたのだ。水木さんが100歳を超えても現役でマンガを描き続ける姿を。
結果的に最後の連載となった『わたしの日々』(「ビッグコミック」2014年1月10日号~2015年5月25日号)には、90歳を過ぎてからもパワフルに活動する水木さんの姿が全編フルカラーでたっぷりと描かれている。
「頼むからもう静かに死なせてくれ」、「91歳の年寄りを働かせるなんて……」とボヤきつつも、ニヤニヤしながら新連載を引き受ける水木さん。
冒険仲間の荒俣宏と海外に遊びにいく話をしながらワクワクする水木さん。
ハンバーガーを豪快にかぶりついたあと、すぐさまもう1個オーダーする水木さん(フレッシュネスやモスよりもマクドナルドが好き)。
とてもじゃないけど、90代前半の日々がつづられているとは思えない。だからこそ、世界中が“突然の訃報”に驚き、涙したのだ。
『わたしの日々』には、水木さんから我々に贈られた至高の言葉がつまっている。のん気に暮らしなさい、なまけ者になりなさい、猫はカシコイ……。
なかでも強烈なのが「屁のような人生」。水木さんは「人生になんらかの価値を求めるのは、心が弱いから」、「瞬時に消えていく屁のようなものに価値を見出し、満足すべきなんです」と説く。
このような格言で締めればいいのに、最終話では便秘になった水木さんが病院に行って美人女医にカンチョウをしてもらい、ブリブリのブリーっと糞づまりを解消、すっきりしながら帰っていくコマで終わっている(余談だが、筆者がかつて水木さんにインタビューした際も、「クソの話は昔から好きでね!」と大笑いしていた)。
生まれてきた意味を過剰に考え、他人と比較して想い悩み、どんどん生きづらくなる現代社会。
「人生の幸せは80歳を過ぎてからです」と屁のような人生を謳歌した水木さんからは、学ぶところだらけである。
水木さんの一周忌を前に、お膝元の調布市は11月30日を「ゲゲゲ忌」と名づけ、様々なイベントを行うことを発表した。
これから毎年、水木さんの命日が来るたびに祭りの様相となるのはすばらしいことだ。
水木さんに会いに、ふらっと調布に出かけてみよう。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口を凌ぐライター。