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『カラスのいとし京都めし』 第1巻 魚田南【日刊マンガガイド】

2017/04/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『カラスのいとし京都めし』第1巻


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『カラスのいとし京都めし』
魚田南 祥伝社 ¥680+税
(2017年3月8日発売)


『はらへりあらたの京都めし』の著者による新連載。

タイトルだけ見ると、なあんだ、また京都めしもんか……と思ってしまうかもしれないが、
前作が京都生まれ、京都育ちの美大生(著者)によるグルメガイドの体だったのに対して、 こちらは古都の寺で何十年も生きてきたカラスが、食への好奇心ゆえに人間(若い男子)に変身して、おいしいもんを食べまくる――という、ヒネリの効いたストーリーもの。

カラスだけに黒髪でちょっとワイルドな風貌の兄ちゃんが、食べもののために必死でバイト。
興味を引かれた食べものには躊躇なく突進してゆくさまや、下宿先のお寺の家族とのやりとりもユーモラスで愛嬌たっぷり。

バイト先のイケメン新人・鳩井くんがじつは同類の鳩で、酔っぱらって鳩の姿で地面で倒れていたり、彼らの正体に気づいた伏見稲荷のキツネ様を、乙羽のいなり寿司で買収したり――てなネタも、バカバカしくも楽しい。
もちろん、生粋京都人の著者だけに、登場する食べものは、中村軒のうなぎ茶漬け、パティスリーカランの西賀茂チーズ、京のつくね家とまるきの親子丼、グリルデミのナポリタン、大河のかすうどん、マルシン飯店の天津飯や餃子……など、いわゆる京名物ではなく、地元民がこよなく愛する「普段のごっつぉ」ぞろい。

インダストリアルかつ精密な独特のタッチの絵もフェティッシュな欲望をくすぐる感じで、読めばコレを食べるためだけに新幹線に飛び乗りたくなってしまう。

おかしな物の怪たちの日常ファンタジーと楽しむもよし、カラスと鳩の凸凹コンビにBL心をくすぐられるもよし。もちろん、京都観光のおともにも大推薦の1冊だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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