日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『漫画家ごはん日誌 たらふく』
『漫画家ごはん日誌 たらふく』
はらぺこ編集部(編) 祥伝社 ¥800+税
(2016年10月8日発売)
活躍中の漫画家総勢50名が、日頃の“ごはん事情”をリアルに綴った「フィール・ヤング」誌の好評連載の単行本化・第2弾。
誰もが食について語ることが普通になった昨今だが、テレビやSNSで流れてくる食べ物の写真が「よそゆき」だとすれば、ここに収録されているのは、いわば「普段着」。
普通なら人様にわざわざ見せないものであり、絵も語り口も「作品」とはまた違い、あくまでラフでゆる~いノリのものだけに、その人の素顔や普段の生活がリアルに覗き見られるのが楽しい。
漫画家といえば、日々締め切りに追われ、1日中机に座りっぱなしで超不規則&運動不足の人が多いイメージだが、それゆえ「オレ流・ズボラ飯」を極めんとする人もいれば、ヘルシーをモットーとする人も、ストレス解消に夜中にブロック肉を燻製にしたりする強者もいらっしゃるようで……。
人の数だけ食のカタチはあるし、食との向き合い方って人間がでるなあ……と、改めて感心させられる。
単行本化に際しての特別企画も読みごたえあり、よしながふみの特別インタビューは一読の価値あり。食事の感想を言い合うことの大事さ、「セックス描写と食事のシーンは相性が悪い」といった独自の見解には、なるほどな~と感心。よしなが作品に対する新たな見解が深まったり。
志村貴子×谷川史子の対談では、「食事のシーンを入れると作品の温度が上がる」という言葉にうならされたり。
レストランでは決して味わえない、ワン&オンリーでバラエティに富んだ「味」がギュッと詰まった一冊。たらふく召し上がれ♡
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69