日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『魔法つかいプリキュア! オフィシャルコンプリートブック』

『魔法つかいプリキュア! オフィシャルコンプリートブック』
アニメディア編集部 学研 ￥1,111+税
（2017年3月18日発売）

かつて、アニメーションを“マンガ映画”もしくはただ“マンガ”と呼ぶ時代があった。
たとえば1960年代から東映が自社アニメを3〜4本ほど詰め合わせて劇場にかけた興行「東映まんがまつり」が後に「東映アニメまつり」「東映アニメフェア」へ名前を変えていった流れを振りかえれば、マンガとアニメが地続きにあたる歴史がうかがえよう。

当「このマンガがすごい！WEB」でも、しばしば、マンガ概念を大きくとってアニメに関係する記事をお読みいただくことがある。
今回も、その一環。
ちょうど今いった東映アニメ作品のなかから、最近刊行された情報ムックをご紹介したい。

書題は『魔法つかいプリキュア! オフィシャルコンプリートブック』。
今や10年を軽くこえた歴史を重ね、「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」に並んで、日曜朝のキッズ向けテレビ番組における顔のひとつとなった「プリキュア」シリーズ……その13作目にあたるアニメ『魔法使いプリキュア！』（2016年2月〜17年1月）の完結を記念した総まとめ解説本である。

人間界に暮らす少女・朝日奈みらいと、異次元にある魔法界からきた少女・十六夜リコが運命的な出会いを果たし、伝説の魔法つかい・プリキュアに変身する力を手に入れて闇と混沌の勢力に立ち向かう……。

壮大なアクションファンタジーの大筋に加え、2人の少女が生まれや考え方の違いを乗り越えておしどり夫婦めいたアツアツな友愛をはぐくみ、妖精の赤ん坊“はーちゃん（花海ことは）”を育てることでひとつの“家族”を形成していくというファミリードラマ要素が深い情緒を与えた“まほプリ”。
そんな感動的な1年間の軌跡が、このムック1冊にぎゅっと凝縮されている。

各キャラクターがまとった私服・制服・変身コスチュームを網羅した設定画をはじめ、宣伝用ポスターや情報誌に描き下ろされた公式イラストの数々を大きな判型のページいっぱいにどーんと収録。
さらに1話ごとの見どころを劇中カットとともに詳しく記した全話ガイド、遊び心いっぱいなエンドカードのまとめといった本編情報をたっぷり提供しつつ、マスコットキャラ・モフルンのプリキュア化が話題を呼んで大ヒットした劇場版や、シリーズ前後のプリキュアと共演した最新映画『プリキュアドリームスターズ！』までもらさず紹介。
スタッフや声優陣が1年間をふりかえるインタビューも充実しており、まさに“コンプリートブック”の看板にふさわしい総合的な内容となっている。

とりわけ、メインキャストのひとり、みらい役の高橋李依さんはここ1〜2年のあいだに躍進した注目株で、『この素晴らしい世界に祝福を！』シリーズなど深夜アニメ方面だけでなく、『魔法つかいプリキュア！』の仕事も語るに欠かせぬ実績となった。
そのインタビューが読める本書は、彼女個人のファンでも確保しておく価値があるだろう（余談だが高橋さんとリコ役・堀江由衣さんは「このすば」でも共演しているうえ、そっちでも魔法を扱うキャラ同士だったというおもしろい縁がある）。

“まほプリ”ファミリーを1年間見守り続けた視聴者の思い入れにしっかり応えてくれる、ごほうびのような公式ムック。
じっくり眺めて、しみじみしていただきたい。

……えっ？
しみじみしすぎて、“まほプリ”ロスに沈んでしまった？

そんな方には、いつもプリキュアたちの女の子同士関係に濃厚な脚色を施してコミカライズすることで有名な上北ふたご先生によるマンガ版がおすすめです。
最近発売された第2巻は特にすばらしく、みらいとリコ、そしてはーちゃんを加えた絆が比喩レベルの疑似夫婦や疑似家族なんてもんを通り越して、“ガチ”の夫婦で親子としか言いようのない描写てんこもり。 読むと鼻血出そうなくらいテンション上がるよ！

＜文・宮本直毅＞
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』（総合科学出版）。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7