日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『魔法つかいプリキュア! プリキュアコレクション』
『魔法つかいプリキュア! プリキュアコレクション』第1巻
東堂いづみ(作) 上北ふたご(画) 講談社 ¥950+税
(2016年8月5日発売)
『魔法つかいプリキュア!』は、変身戦闘少女アニメ『プリキュア』シリーズ第13作目、チームとしては11代目にあたる作品。
好奇心旺盛で元気な中学2年生の少女・朝日奈みらいが、魔法つかいの世界からやってきた理知的な少女・リコと出会い、ともに伝説の魔法つかい「プリキュア」に変身して闇の魔法に立ちむかう、というのが大筋だ。
生まれた世界、文化も考え方も違う少女たちがわかりあい、よりそう姿がうるわしい。
歴代に対する特徴は4~5点あるのだが、とりわけ、メインキャラが生活の場として人間界と異世界の両方を等しく行き来することが挙げられる(劇中の呼び名は「ナシマホウ界」と「魔法界」)。
過去作では特殊ステージだった異世界を平時の舞台として主人公コンビが魔法学校に通う図は新鮮で、長く続いたシリーズでもまだ開拓の余地が多いのだと示している。
さて、そんな「まほプリ」のマンガ版は、アニメの合間を埋めるオリジナル日常話を中心に構成。
上北ふたご先生おなじみの手際で、みらいとリコのはぐくむ関係がほとんど恋心のような親愛としてねっとり描かれる。
特に第5話、人間界の学校へ転入したリコが、自分の知らないみらいを知る同級生たちにジェラシーを覚える話がすばらしい。
みらいは大勢の友だちを抱え、だれとでも親しくなる。彼女にとって自分は大勢のなかのひとりでしかない……と、悩むリコ。
しかし、リコがいちばん大事だからこそ他の友だちとの輪に入って楽しくすごしてもらえればうれしい、というのがみらいの願いだった。
気持ちをさらしあい、夫婦レベルで特別なパートナーとして深く結びつく流れが、アニメにはないエピソードでありながら、『魔法つかいプリキュア!』という作品の真骨頂をみごとに切り出している。
「わたしのリコ」というフレーズがなんともキュンキュンさせてくれる一幕だ。
本巻後半では、2人が妖精の赤ちゃん「はーちゃん」を育児する姿と、はーちゃんが成長して追加戦士「キュアフェリーチェ」になってからの活躍がやはりオリジナルで展開する。
人魚の王子さまとの淡いロマンスを通して、アニメよりもさらにちょっぴり精神的にオトナになるはーちゃんを見ることができるぞ。
現在、アニメでは新たな敵勢力が出現し、10月には劇場版の公開もひかえている。
あわせて新展開を描くであろうマンガ版の第2巻を楽しみにしよう。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7