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『マヤさんの夜ふかし』 第2巻 保谷伸 【日刊マンガガイド】

2017/05/11


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『マヤさんの夜ふかし』

  
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『マヤさんの夜ふかし』 第2巻
保谷伸 徳間書店 ¥580+税
(2017年3月18日発売)


自分のことを“魔女”だというマヤさん。
フリーターの彼女は深夜になると、PCの電源を入れ、マイクとヘッドフォンをつなぎ、音声チャットを立ちあげる。
話し相手は、同じく深夜にマンガを描いている豆山。

さみしがりやでひねくれ者で、ずぼらな魔女(?)の、部屋からほとんど出ないマンガ。
音声チャットによる会話がメインなので、2人は基本的にオンラインでしか会わない。
でもほぼ毎日話している。だれよりもいっしょにいる時間が長い。

孤独はこころを蝕む。
コミュニケーションをとる相手がいなくなると、たとえ都会に住んでいようが、心がもたなくなりがち。

第2巻では、郵便受けにネット通信費の請求書が来ていたことに、マヤさんは心を踊らせている。
自分の居場所があり、この住所に存在している、という証に感じられるからだ、という。
病んでいるんじゃない。深夜に孤独だと、そのくらいポエムしてしまうのだ。

マヤさんのチャットにつきあっている豆山が何を考えているかも、第2巻で描かれる。
普段は文句ばかりで、マヤさんのわがままに辟易(へきえき)。
実際は、ひとりでいる時よりも、マヤさんとの音声チャット中はいつもより口を大きく開けてしゃべり、感情表現が豊かになる。
彼女もまた、会ったことのないマヤさんとのやりとりで、いやされている。絶対いわないだろうけど。

現代人は、物理的接触が少なく、社会における人間関係づくりも希薄化しているため、孤独度はどんどん高くなってきているように思う。
しかしネットでのコミュニケーションは、どんどん密度が濃くなり、“会っているかいないか”はさほど問題ではないほど、親しい友人関係が築けることもある。
マヤさんと豆山は、音声チャットで何かおもしろいことをする訳じゃない。へたしたらたいしてしゃべらないことすらある。
“つながっている”この安心感が、最大のいやしだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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