『キミにともだちができるまで。』第5巻
保谷伸 徳間書店 \561+税
(2015年2月20日発売)
「コミックゼノン」第1回マンガオーディションにて準グランプリを獲得した保谷伸の初連載作品『キミにともだちができるまで。』が完結した。
舞台は仙台。主人公は2人の少年。
ムダと面倒が大嫌いな高校2年生・鷹司清之助(たかつかさきよのすけ)と、彼の従兄弟で極度の人見知りをこじらせた小学1年生の鷹司龍太郎(たかつかさりゅうたろう)だ。
成績優秀な清之助は東京の大学を目指しており、友だちを作ろうとしない。「どうせ卒業したらバラバラになるのだからムダ」と考えているのだ。
その反面、お小遣いをくれる親戚のオトナにはいい顔をする。彼にとって、人間関係は打算でしかない。
一方の龍太郎は、父子家庭のうえに保育所に通っていなかったこともあり、ずっとひとりで遊んできた。
そのため同年代の子どもと遊ぶ機会もなく、お父さん以外の人間とは筆談でしかやりとりできなくなってしまった。
せっかく小学校にあがったので、本当は友だちをたくさん作りたいが、どうしても声をかけることができずに悩んでいた龍太郎。
そこに登場したのが2人の従妹である雪だ。彼女の画策で、清之助は龍太郎の友だち作りを手伝うハメになる。
この最終巻では、春から始まった季節がちょうど一巡する。
渋々ながら龍太郎の友だち作りをサポートしてきた清之助も、知らず知らずのうちに変わり始めていた。
文化祭の打ち上げで同級生の家にお邪魔したり、クリスマスパーティーでプレゼント交換をしたり、イベント参加率も飛躍的に上昇。学園ノリのコミュニケーションを断絶してきた以前の彼からすれば、信じられない状況だ。
ムズムズとわきあがる新しい感情がこそばゆくも、それほど悪い気持ちはしない清之助。
肝心の龍太郎はといえば、すでに仲良く遊ぶ仲間ができ始めていた。そんななか、2人の関係にも変化が訪れる。
ぶるぶると震えながらスケッチブックに書いた文字で必死に会話する、いたいけな龍太郎にもう会えないのは寂しいけど……。言葉のひとつひとつが温もりにあふれ、愛おしく感じるすばらしいフィナーレだ。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」