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『聲の形』第7巻 大今良時 【日刊マンガガイド】

2015/01/07


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『聲の形』第7巻
大今良時 講談社 \429+税
(2014年12月17日発売)


本誌『このマンガがすごい!2015』のオトコ編ランキングで第1位となった、大今良時『聲の形』の最終7巻が発売された。
いじめや障がいを題材としたことで反響を呼び、また卓越したマンガ表現が高く評価された本作。第7巻では、紆余曲折を経た主人公・将也と硝子の2人の物語がついに幕をおろす。

6巻以降、硝子はみずからの意思で動くようになり、積極的に周囲との距離を縮めていくようになる。髪型を変え、それまで隠していた耳(と補聴器)を露わにするようになったところからも、彼女が障がいを受容していく段階が見て取れるだろう。
そんな硝子に導かれるように、将也も×マークに象徴されるような、自分が築いてきた対人関係における壁と向き合う。
この7巻は、それぞれのアクセプトの形が描かれている点に注目したい。

また、硝子に芽生えた主体性は、いきおい卒業後の進路問題にもつながる。
将也も硝子も、本質的に大きく成長したわけではない。だからこそ、お互いや映画制作メンバーたちと衝突を繰り返してしまう。相互の理解はやはり難しいものだ。
それでも経験則から、補助線を一本引くことができるようになり、そこから理解への糸口をたぐることができるようになる。だからこそ登場人物たちが自分と、他者と向き合う瞬間に、われわれ読者は心を揺さぶられる。

なお、植野と佐原の関係性は、将也と硝子の関係性の変遷と奇妙に符合する。2組の受難と贖罪の物語は相似形を描き、やがて「描かれざる未来」への扉を開いていく。
多くの読者が感じたように、本作『聲の形』は「私たちの物語」であり、だからこそ「すごい!」マンガなのである。


『このマンガがすごい!2015』オトコ編1位記念大今先生のインタビュー 
前編はコチラ!
後編はコチラ!


<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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