『聲の形』第4巻
大今良時 講談社 ¥429+税
(2014年6月17日発売)
聴覚障がい者といじめという異色のテーマから、大きな話題を呼んだ本作。
もちろん、センセーショナルな題材ありきの作品ということではなく、耳の聞こえない少女・西宮硝子へのいじめ描写は、本能的にゾクッとさせられるものがあった。
だからこそ、西宮をいじめていた石田将也が高校生になってからのエピソードは、正直にいえば「不安」だった。「がんばって西宮さんと仲直りしました、めでたしめでたし」という、安易な内容にはなってほしくない。
そんな思いを吹き飛ばすように、高校生になった西宮と石田が距離を縮めていくほどに、多くの人間を巻き込んで、問題はこじれていく一方だ。
特に、かつて同級生で西宮のいじめに加担していた友人たちや、西宮を嫌う植野との再会が、石田を迷わせ続ける。
石田が心を許した相手以外の顔にバツ印がつく……という演出を用いて、がんばってもがんばっても解決策がなかなか見えない人間関係を描く、この作品。
西宮の家族の一筋縄ではいかない問題も含めて「人間関係は簡単には直らない」「だから人間は考えるのだ」という主題はブレるところがまったくない。
障碍(しょうがい)は難しい問題だが、人生の悩みのひとつに過ぎず、人間が乗り越えるべきものは多いと雄弁に語る。じつに強固な作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」