『ふらいんぐうぃっち』第2巻
石塚千尋 講談社 \463
(2014年6月9日発売)
横浜から青森にやってきた女子高生・真琴、実は彼女は魔女だったのです!
……なんて書き方をすると、魔法を軸にしたドタバタコメディに思えるが、さにあらず。居候先の親戚で同級生の圭、その妹の千夏、酒屋の娘のなお、黒猫のチト……と、いつものメンバーによる、ゆったりとした季節の流れが描かれていく。
魔法が活躍するエピソードは、ほんの少し。表面上は「青森を舞台にした日常もの」と大差はない。
ただ、真琴が魔女であることがちょっぴり周囲を、そして読者の心を浮き立たせ、コマの向こうに広がる普通の毎日をキラキラとさせる。
今巻では、千夏が魔女の弟子入りを志願するといった動きはあるものの、基本的には、下校中に「ばっけ(ふきのとう)」を拾って天ぷらにしたり、弘前城でお花見をしたり……と相変わらずマイペース。
状況を詳細に描き込まずスッスッと場面転換し、物語の余白を多くとっているのも独特の浮遊感につながっている。読めばあなたも、ふんわりとした魔法にかかるはずだ。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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