『イエスタデイをうたって』第10巻
冬目景 集英社 ¥607
(2014年5月19日発売)
大学卒業後、フリーターを経てカメラマンへの道を歩み出したリクオ。その想い人・榀子(しなこ)。そしてリクオに想いを寄せる少女・ハル。
なんと20世紀から続く長期連載となった、煮え切らない三角関係を中心にしたモラトリアム恋愛劇だ。
今巻では、ハルが自分の気持ちに決着をつけることを迫られ、(たぶん)最後の逃避行へ。
リクオと榀子の微妙な関係も、核心への第一歩を踏み出す。
あいかわらずジワジワとした進行ではあるものの、あとがきマンガで「あと少しの辛抱」と報告されているとおり、静かにラストシーンへと向かっていることが見て取れる。
連載15年目にして、いよいよ物語は(本当に)佳境へ突入だ。
ちなみに今巻の個人的な見所は、おそらく2014年現在、本作以外では見られないであろう、固定電話での会話シーン。
留守電のランプ点滅を見たとき、説明しようのない涙が……。
<文・小林聖>
主にマンガについての記事などを手がけるフリーライター。マンガ情報サイト・ネルヤ主催。年間だいたい1000冊くらいマンガを買ってます。
nelja