姉の結婚 7
西炯子 小学館 ¥463
(2014年5月9日発売)
「恋愛や結婚に振り回されずに、自分のペースやルールを大事に生きていきたい」。ある程度、経験も年齢も重ねた大人こそ、そう思うもの。岩谷ヨリも、そう考えて地元に戻ってきたものの、図らずも中学の同級生・真木誠との不倫にはまっていってしまう……。
そんなアラフォー主人公の姿が描かれる『姉の結婚』は、ほのぼのとしたタッチのなかにも辛味の利いた、女性でも男性でも心がつかまれる少女マンガだ。ロマンスや笑いもありつつ、描かれているのは現実の苛酷さや厳しさ。
それでもそのなかで、ヨリをはじめとした登場人物たちは必死に自分らしく生きようとする。我々読者は、そんな姿にこそキュンとさせられるのである。
そして、大人だからこそのそれぞれの必死さ、ずるさ、脆さも描かれているところが、本作の魅力。初恋の人・ヨリへの想いを振り切れず、妻を捨てて彼女と一緒になろうとする真木。「……不惑ですから 一番にしなければならないことをするのです」という台詞が重い。若者世代にはぶざまにもかわいらしく、同世代には痛々しくも共感をもって映るはずだ。
最新刊では、ヨリの知らないところで関わる人々の、衝撃の事実が次々と明らかに! いよいよ離婚を切り出した真木だが、妻・理恵に妊娠を聞かされる。自分がヨリの身代わりだったことを知った理恵の心は……。結婚が決まっているヨリの妹・留意子の動向も気になる。
恋愛、仕事、成長、安定。自分が本当に欲しいものはなんなのか。
そう悩んでいる人も、ぜひ。そのすべてが『姉の結婚』では描かれているのだから。大人のあなたが今、マンガで読みたいこと、人生で欲しいものも見つけ出せるはずだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2014 Summer』が6月5日に発売に。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。