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『妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』 坂井恵理 【日刊マンガガイド】

2014/09/26


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『妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』
坂井恵理 講談社 \743+税
(2014年9月12日発売)


通常、妊娠期間といえば約10カ月なのに、なぜこのタイトル?とまず疑問に思うことだろう。
17カ月のうち、7カ月は後期流産により胎内で亡くなった子のぶんだ。作者はその後、すぐに妊娠し、無事第一子を出産している。

女性タレントなどが5カ月前後で妊娠を発表することからわかるように、この時期を超えればおおむね「安定期」と呼ばれる。 しかし、要所にふされている女医・宋美玄の解説によると7カ月以降となった妊娠後期の流産も、低い確率だが起こりうるということだ。
さらに、すでに亡くなってしまっている胎児を、普通の出産と同じように産むこととなるため、肉体的、精神的なダメージも大きい。作者は妊娠を描いた作品によくあるスピリチュアルな言論を極力排し、悲愴感で盛り上げないよう淡々と描いているが、そのぶん、感情があふれる瞬間は胸を締めつけられる。

作者の39歳でデキ婚、40歳での高齢出産という経験を描き、なぜこの年齢まで結婚や子供を持つ気にならなかったのかを掘り起こしながら、ごく普通の家族に潜む問題と心の整理がつくまでの過程や、社会の暗黙の了解に対しての疑念を、クールな筆致で描いている。こちらは独身、出産経験のない人にも共感を呼びそうだ。

無事生まれた子どもへの「かわいい」という反応に心温まると同時に、子どもが欲しくなかった自分もちゃんと共存している心理が描かれる。
月並みだが、「子どもが無事生まれてくること自体、奇跡である」という言葉を思い出さずにいられない。
かくいう私も35歳で現在妊娠中だが、現代社会には子どもを「欲しい」と感じることにまで、見えないハードルがあることにも気づかされる。底抜けに明るい出産エッセイではないぶん、産みたくない派の女性にも響くのではないか。



<文・和智永 妙>
ライターたまに編集。『このマンガがすごい!』以外に、「マンガナビ」公認ナビゲーター、ほかアニメ記事など書いています。

単行本情報

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