『あなたのことはそれほど』第2巻
いくえみ綾 祥伝社 \933+税
（2014年7月8日発売）

医療事務の仕事をしている美都は、ある日偶然、大好きだった初恋の人・有島と再会。2人は男女の仲となるが、じつはすでに有島は結婚しており、そして美都にも夫がいた。
納得ずくで関係を続けることにする2人。

美都と夫、有島とその妻。4人それぞれの視点からこれまでのエピソードが語られた1巻を経て、2巻ではいよいよ、事態が動き始める。
有島に夢中の美都は、優しい自分の夫にも、出産したばかりの有島の妻に対しても罪悪感なくＷ不倫関係を続けていた。だが、結婚1周年の夜、美都は夫から衝撃的な告白をされるのだった……！

人物の容姿ニュアンスの描き分けの絶妙さ、言葉で説明するのではなく演出で語る作者の手腕もいっそう冴え渡る。
そして、残酷さと不穏さを漂わせたタイトルどおり、それぞれの思惑や気持ちの温度差までもがみごとに描かれ、ラブストーリーのはずが、サイコサスペンスを読んでいる気分になってくる。
いや、恋とはもともと、少し「狂う」ものかもしれない。ましてや既婚者同士ゆえに錯綜する愛憎。このただならぬ緊張感、続きが気になって仕方ないのだ。

＜文・川原和子＞
マンガエッセイスト。幼稚園教諭、アニメ制作会社等を経て独立。著書に『人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた』（NTT出 版）。NTT出版Webで新連載準備中。☆連載　おすすめマンガ時評「此れ読まずにナニを読む？」（NTT出版Web内）
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