『きみが心に棲みついたS』第1巻
天堂きりん 祥伝社 \724
(2014年6月7日発売)
「このマンガがすごい!2013」のランキング「オンナ編」で9位となった『きみが心に棲みついた』が、「FEEL YOUNG」にホームを移してリスタートをきった。
タイトルに加えられた「S」は、「サクリファイス(生贄)」の意味を持つそうだ。
クールな真人間・吉崎の登場により、少しずつ解消に向かうのかと思われたキョドコと星名の共依存は、むしろますます強固なモノへと加速している。
後輩にして恋敵でもある飯田との勝負がかかった大事なプロジェクトを、そっちのけにして星名に振り回されるキョドコに周囲は呆れ気味。ついでに言えば読者も呆れ気味だ。かつて、ここまで共感できないヒロインが存在しただろうか!?
この点については作者の天堂きりんも大いに悩みながらペンをとっていたようだが、本巻を読むかぎり「とことんやってやろう」と腹を決めたことがよくわかる。
巻末には星名の小学生編が収録されているのだが、これが衝撃の内容で、本作の大きな秘密が明かされる。
一方、キョドコの過去も少しずつ描かれ、2人が出会ってしまった時点で“外そうとすればするほど絡み合っていく知恵の輪のような関係になることが必然だった”ことがよくわかる。
キョドコにきっぱりと拒絶され、すっかり影が薄くなってしまった吉崎が、再びキョドコの心に入り込む隙間はあるのか? キョドコと同様に何もかも星名に支配されはじめた飯田がどう出るのか?
行き着く先の見えない泥沼の人間模様がどのような着地をするのか、最後までしっかりと見守りたい。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」