3週にわたってお届けした押見修造先生のインタビューもついに最終回。今回は「エロ」「青春」「家族」など『惡の華』を形作るエッセンスについて、押見先生が語り尽くす! そして最後には誰もが気になる次回作のお話も!
前編はこちら!
“純愛”を考えていたら体操服を盗む話ができあがった。 『惡の華』押見修造【前編】
中編はこちら!
告白したシーンを描いたら終わりのその先が見えた。『惡の華』押見先生【中編】
押見修造にとってのエロ
――思春期って、精神的な部分だけではなく、肉体の成長も大きく影響しますよね。性の衝動とか。
押見 はい、エロ。エロさは(作品で)保っていきたいです。でも露骨なのがやりたいわけじゃない。「露骨じゃないけど、よりエロくなれたらな」って思います。
――ちょっと、その押見先生の言う“エロ”について詳しくお話しください。
押見 以前、別の機会で「『聲の形』[注1]がすごくエロい」と言ったときに、説明不足で後悔したんです。
押見 『聲の形』みたいなエロさって、すごいなぁって尊敬してるんです。あの作品のエロさって、女の子が可愛いとかそういうことではなくて、まあ精神的な絡み合いと言いますか。くっついたり離れたり。なんて言うんでしょうか、寸止め感。寸止めしたり、ぶつけてみたり。そういうところが、すごいエロいと思うんですよねぇ。
――押見先生の作品だと、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』がそっち方面?
押見 あ、そうですね。あれなんかも、自分のなかではエロの範疇に入るんです。ただ、そんなに踏み込めなかったというか、そんなにエロくなかったな、と。
――そっち方面でのエロ、ってことですね?
押見 そうそう、そっち方面のエロ(笑)。 “エロい”とか“変態”とか、そういう感じで使っちゃうので、よく人から誤解されがちなんですけど。
――『志乃ちゃん~』は、たしかにそっち方面のエロさがありますね。
押見 もっとくっついたり離れたりが激しくなるとエロくなっていくのかなぁ、なんて思います。
――『惡の華』にあてはめて考えると、仲村さんや佐伯さんは中学生なので、身体的な部分でエロさを感じる[注2]わけではありません。
押見 女の人を「この人、エロいなぁ」って思うのは、自意識が漏れ出ちゃっているときなんですよね。顔とか体つきよりも、内面が漏れ出していると……ね(笑)。
――そうですね(笑)。
押見 それはもう男もそうなんですけど、中学生がエロいと思うのは、フィルターなしでそこが全部出ちゃってるからなんです。僕が14歳という年齢にこだわりを持つのは、14歳がいちばんそこが露骨な年齢と思うからなんです。13歳だと、まだちょっと出てない。
――出始めが14歳?
押見 四方八方に飛び散っているのが14歳。15歳になると方向性がちょっとだけ整えられるようになる、のかな。
――そのへんの意識があるから、『惡の華』中学生編は14歳なんですか?
押見 そうです、そうです。
- 注1 『聲の形』は「週刊少年マガジン」連載作品。作者は大今良時。耳の聞こえない少女と、彼女を傷つけた少年の、ひりつくような青春譚。
- 注2 そういう向きがいることは承知しています。