前編では、『惡の華』が“純愛”というテーマから生まれた事を語ってくれた押見修造先生。そうした生まれた『惡の華』という物語の幕を引くことは、いつから意識されていたのかに迫る。
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“純愛”を考えていたら体操服を盗む話ができあがった。 『惡の華』押見修造【前編】
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【インタビュー】14歳が一番エロい! そして次回作は…… 『惡の華』押見先生【後編】
インパクトのある表紙カバー
押見 最初のころは「やばい」[注1]って感じで焦ってたんです。
――どういった点で?
押見 これ売れないとマジでやばい、と。担当さんからのプレッシャーもあって、なんとしても売れなきゃと。
――マンガの場合、ある程度は売れてくれないとすぐ連載が終わっちゃいますからね。
押見 売れないと終わりますねぇ(笑)。
――売れるためのテコ入れというか、どんどんアイデアを放り込んでいくわけじゃないですか。押見先生はどこを意識しました?
押見 そういえば、内容的な面ではテコ入れらしいことは全然しませんでしたね。表紙ぐらいかな?
――「クソムシ[注2]が」ってやつですね。
押見 インパクトに残る表紙にしよう、って意識はありました。
――実際、書店でのインパクトはかなりありました。4巻以降、雰囲気をガラリと変えましたが、周囲の反応はどうでした?
押見 本屋さんで見つけにくい、という話は結構あったみたいですね。同じ作品だと思われない、とか。まあでも、担当さんもノリノリで受け入れてくれたので。
――変えよう、という提案は押見先生から?
押見 僕が言い出しっぺだと思います。結構悩んだんですけどね。主要3人を3巻までに使ってしまったので、このままフキダシを続けるのもどうなのかなぁ、と。ちょうど作品の雰囲気も変わってきちゃってるところがあったので、これは一気に変えたほうがおもしろいんじゃないかな、と思ってました。
――高校生編に入った7巻以降、また表紙の雰囲気が変わります。
押見 作中でルドン[注3]の絵をモチーフに使っているんです。「目玉の花」ですね。ルドンは最初のころは白黒の版画ばっかり描いていたんですが、晩年になると極彩色の綺麗な絵になっていく。それのオマージュです。
- 注1 連載開始当初、『惡の華』の読者人気は「低空飛行だった」とのこと。2巻収録の第12 話「われとわが身を罰するもの」(通称「クソムシの海」)以降、人気が上昇した。
- 注2 作中で仲村さんが使う言葉。1巻の表紙カバーに大書されている。 もともとは押見先生が奥様からメールで頂戴した、ありがたいお言葉。結婚後、ケンカをして 押見先生が裸足で家を飛び出したときに、「なに逃げてんだよ」というノリで送られてき たという。「クソムシはその1回だけ。あまり言ってくれない。〝クズ鉄〟とはよく言わ れました」(押見)とのこと。