最終回について
――連載を終わる、というのはどのタイミングで決めました?
担当 結構前でしたよ。ある瞬間でお互いに「終わりますね、これ」って感じになったんですよね。
押見 常盤さんに告白した段階です。
――9巻ですね。ではそこから、あのラストの展開はもう決めたんですか?
押見 群馬に戻って、そのあとで仲村さんに会いに行く、最後は仲村さんで終わる……、というのは決まっていた感じはあります。仲村さんと会ったあとにどう着地するか、という部分は、まだその時点(9巻前後)ではブレてましたけど。
――全編を通して最終回まで読み返すと、同じセリフや同じシーンが、シチュエーションを変えて何度か出てきます。わかりやすいところでは、佐伯さんの「今幸せ?」のセリフとか。最初と二回目では、かなりニュアンスが異なります。こういったことは、意識して描いたんですか?
押見 それは半分、無意識なんですよね。アニメの脚本の打ち合わせに参加したときに気づきました。モチーフを繰り返しているんだな、と。
――ボードレールの脚韻みたいな。
押見 ああ、そこまでは考えてなかったです。ただ「ずーっと繰り返して、同じところに戻ってくる」みたいなものは考えていました。
――という考えのもとに、あの最終回になったんですね?
押見 そうです、いかにも「最終回」な終わる感じではなくて、あそこからまた始まる、みたいなイメージなんです。
――最終回は2色でした。
押見 「最終回だからカラー(4色)にしますか?」と言ってもらえたんです。最近は、最終話がカラーになるパターンが結構ありますよね。それも格好いいかな、と思ったんですけど「この話の内容で最後が4色になるって、どうなんだろう?」と思い直して。
――内容が内容だけに。
押見 なんか嘘くさくなりそうだな、と思ったんです。それよりは、普段どおりに白黒のまま進んでいって、ある場面から急に色がつく、みたいな感じにしたかったんですね。
――とある擬音から。
押見 世界が変わるというか、世界に色がつく、みたいな感じで。あとは『ねじ式』[注4]オマージュです。
――これ、コミックス11巻だとどうなります?
押見 コミックスで2色をやろうとすると値段が上がっちゃうので断念しました。だから雑誌だけです。
――では2色版の最終回が気になる方は、電子書籍版の「別マガ」バックナンバー(2014年6月号)をチェックしてもらいましょう。
- 注4 1968年にマンガ雑誌「ガロ」(青林堂)に掲載された、つげ義春の短編作品。つげ義春 の代表的な作品で、1998年には浅野忠信主演で実写映画化もされた(監督石井輝男)。 「ガロ」掲載時のオリジナル版は2色で掲載された。文庫版収録時には1色になり、また 修正も施されたが、2000年に青林工芸舎から発行された『ねじ式―つげ義春作品集』で は、オリジナル版そのまま(判型、2色、修正なし)で収録されている。