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『サトコとナダ』 第1巻 ユペチカ(著) 西森マリー(監修) 【日刊マンガガイド】

2017/08/02


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『サトコとナダ』



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『サトコとナダ』 第1巻
ユペチカ(著) 西森マリー(監修) 講談社 ¥640+税
(2017年7月8日発売)


「ツイ4」で連載されて話題をさらった作品が単行本で登場。
日本人の普通の女の子で、大学生のサトコは、アメリカにてルームシェアを始めたが、その相手とは、サウジアラビアから来たイスラム教徒で同じく大学生の女の子・ナダである。
あの独特の、目しか見えない黒ずくめの衣装(ニカブ)に、サトコは少々戸惑うものの、その「中身」はとってもキュートなうえに、しっかり者の素敵なお嬢さんだった……。

今、特に気になるのはイスラム教徒=ムスリムの、特に女性はどんなふうに生きているのだろうということ。
顔や体を覆い隠す衣装を「着せられ」、抑圧されている、と認識する人も少なくないのでは。
実際に、人権意識の高い欧米などの一部では、着用禁止との法律まであるのだ。

しかし、当のナダはとても自由だ。
ヒジャブ(髪や体を隠すベール。ほかに、チャドルやブルカなどもある)姿で自撮りにいそしみ、家に帰れば華やかに着飾って「女子会」を満喫する。

ナダはイスラム教への信仰も厚いが、決して洗脳などでなく、砂漠で生きてゆくために授けられた知恵、と解釈しているかのよう。意外にも、最先端の技術を取り入れる柔軟さにも驚く。
ムスリム女性の衣装のなかでも、特に禁欲的に見えるニカブの着用について、ナダは「無敵の気分よ」と評する。女として対応を変えられることがない、「盾」のようなもの、だそうだ。
「美貌」「若さ」で選ばれることを無意識のうちに受け入れ、必死で装う日本人女子こそが、戒律よりももっと厳しいルールに縛られ、不自由なのかも? そんな気すらしてしまう。
女子らしい共感とともに、サトコが多様性を受けいれてゆく過程が、丁寧に描かれる。

お堅い話はともかく、サトコはナダを敬愛し、ナダもサトコの素直さを愛おしく思う。
ルームメイトとしてご飯をつくったり、未来について語りあったりと、異国の地ではぐくまれる友情に心が温まるのだ。ついでに、ナダのニカブに潜りこむサトコ、という絵面は萌える。
サトコとナダがずっと素敵な関係でいられますように……。
多神教(世界から見ると少数派!)の日本人らしく、あちこちに祈っておきます!



<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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