『人工精霊タルパちゃん』
ふみふみこ 講談社 \610+税
（2014年10月10日発売）

『このマンガがすごい！2014』でオンナ編17位にランクインした『さきくさの咲く頃』はじめ、連載中の『ぼくらのへんたい』、『神主さんと僕の彼女』。『さくらの園』など、次々に話題作を発表し続ける、今もっとも注目すべき作家・ふみふみこ。
少女マンガ誌、青年誌をまたにかけて活躍、その作風の広さにも毎度驚かされる。

本作は、自分がイメージすることで“タルパ”なる架空の人物・キャラクターを作り出す……という設定のもとに始まる、オムニバス・ショートストーリー。
ルックスや性格を決めるのは自分次第。食事も世話もいらないが、訓練すればちゃんと会話ができるすぐれものだ。
意見せず、ただ愚痴を聞いてくれる相手を求める雑貨屋勤務の女子は小さなワニの姿のタルパを。引っ込み思案すぎて友だちが作れない中2女子は、おしゃべりの練習相手になってくれる女子中学生を。もちろん理想の彼氏を作ってしまうことだってできる！

理想を形にしたはずのタルパだけど、すみずみまでは思いどおりにならず、ケンカになったりすることも。そうしたなかで、自分の気持ちに正直になる術を見つけたり、心の奥底にあったことに気づいたり。
いつのまにかいろいろな悩みを抱える登場人物たちの気持ちに寄り添って、ほんわりとした気持ちなれる作品だ。

ちなみに“タルパ”とは、チベット密教に伝わる“無から作り出された霊体”のこと。
本物のタルパを作り出すのは相当難しそうだが……「脳内にタルパちゃんに似た妄想上の話し相手ならいる！」という人はけっこう多いかもしれない!?

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」