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『僕たちの生きた理由』第1巻 渡辺和幸 【日刊マンガガイド】【リコメンド特集】

2015/03/16


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『僕たちの生きた理由』第1巻
渡辺和幸 講談社 \429+税
(2015年3月9日発売)


ちょうど今は卒業式のシーズン。
卒業式といえば、多くの人には甘美な……とまではいかなくても、それなりに「よき思い出」となっていることだろう。しかし、この『僕たちの生きた理由』では、小学校の卒業式の日に、とんでもない恐怖体験を強いられることとなる。

主人公のアキラは、今ひとつ達成感を感じないまま卒業式をむかえてしまったことを物足りなく思っていた。
そこに、少し前からいい感じの関係になっていたクラスメイトの女の子・姫野から、「最後に何かいい思い出作ろう」という、うれしすぎるメールが届く。だが、待ち合わせた教室で見たものは、無数の糸で天井から吊るされ、手足や首がヤバい方向に曲がっている姫野の姿だった。
超ハッピーから一転、気がつくと11人のクラスメイトとともに、学校に監禁されていることを告げられる。そして机の上には、姫野にそっくりな不気味な人形が転がされていた──。

とまぁ、ジャンルとしては「シチュエーション・ホラー」と呼ばれる、状況限定型のスリラー。
この脱出不能となった夜の小学校を舞台に、「人形遣い」と呼ばれる不気味な異形の敵と小学生たちの命をかけた攻防が描かれる。

現状、どういった理由や理屈があるのかは不明だが、「審査に失格」となると、その人形遣いによって姫野と同じように人形にされるという描写が、かなりトラウマもの。
それだけではなく、本来なら力を合わせて戦わなければならないところ、小学生ながらエゴや欲望、嫉妬などマイナスの感情が次第に表面化して、互いの気持ちがバラバラになっていく描写もたまらない。
さらに事件の鍵を握ると思われる、夏休みに事故死した少年・三神と、それぞれの関わりも気になるところだ。

同ジャンルの不朽の名作として、楳図かずおの『漂流教室』があげられると思うが、本作はそこにゲーム的な表現(ライフ状態や所持アイテムがときおり表示されている)や謎解きの要素もプラスして、これからどう展開していくのか興味深い。

さすがに『漂流教室』のように、クラスメイトを焼いて食料にするようなことはないとは思う(たぶん)が、今の時代の子どもたちに、ふんだんにトラウマを植えつける描写に期待したい。



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<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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