『僕たちの生きた理由』第1巻
渡辺和幸 講談社 429+税
(2015年3月9日発売)
新鋭・渡辺和幸が「マンガボックス」にて連載中の話題作が待望のコミックス化。
卒業式当日の小学校に閉じこめられた、12人の児童を待ち受ける過酷な運命が描かれる。
主人公のアキラはイマドキの小学6年生。
彼は卒業式当日、漠然としたものたりなさを感じていた。勉強もスポーツもケンカもそこそこだったけど「クライマックス!」「達成感!」という手ごたえがない。そんなアキラが一世一代の大勝負に出る。想いを寄せていた同級生の姫野に告白するのだ。
しかし待ちあわせ場所の教室でアキラが目にしたものは、見るも無残な姫野の姿。
彼女のスマホから鳴り響く「銀河街の悪夢」とともに気絶したアキラが目覚めると、そこは教室。自分を含めて12人のクラスメイトが学校に閉じこめられたのだ。
おびえる彼らに対してスピーカーから流れる「一次通過、おめでと」の声。
これから始まる最終審査とはいったい――!?
シチュエーションホラーというと残虐な描写のてんこ盛りが定番だが、本作の血の量は控え目で、スプラッタ系が苦手なアナタでも安心印。児童たちに襲いかかるのは謎の人形遣いという設定であり、犠牲者は人形化して無残な最期をとげるのだ。
この人形遣いがなんとも不気味。3つの仮面をつけた妙ないで立ちでどこからともなく現れ、ターゲットの顔に仮面を押しつけ、相手を人形にしてしまうのだ。ひー!
不気味な世界観は1巻を読み終えても全貌がつかめない。人形遣いに“中の人”が存在することはたしかだが、それが大人なのか同級生なのかも不明である。
鍵を握るのは夏休みに死んだはずの三神くん。彼と閉じこめられた12人にはどうやら因縁があるようで……。
ホラー、パニック、アクション、ミステリーとややつめこみすぎのきらいもあるが、ハイレベルな画力と構成力で、スッキリとテンポよく読み進められるのも魅力。小学生とは思えぬほど女の子たちが色っぽいのも目に楽しい。
銀河街の悪夢、児童たちに表示されるハート、三神くんの死の真相、人形遣いの正体、仮面に書かれた数字、犠牲者たちは本当に死んでいるのか……。
多くの謎が次巻以降、少しずつ明らかになっていくことだろう。
予想のナナメ上を行く、怒涛の展開を期待しております!
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。4月4日公開・松尾スズキ監督『ジヌよさらば~かむろば村へ~』の劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」