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【日刊マンガガイド】『僕だけがいない街』第4巻 三部けい

2014/06/26


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『僕だけがいない街』第4巻
三部けい KADOKAWA/角川書店 \605
(2014年6月2日発売)


ピザ屋のバイトをして食いつなぐ、売れない漫画家・藤沼悟。彼は、何度も時間が巻き戻る「再上映(リバイバル)」という現象を何度も体験していた。
「再上映」により、遠い過去に飛ばされた悟の前に、記憶の彼方に押し込まれていた、同級生女子・雛月加代が誘拐・惨殺された事件が、再び立ちはだかる……。

たったひとりで過去に戻って「やり直し」をするタイムリープものでは、基本的に主人公は究極の「ぼっち」だ。
未来から来た? どうせ信じてもらえない。まして小学生に逆戻りした悟は、親がいなくては生きていけない無力な子供。

現代では母を殺されたあげく濡れ衣を着せられ、過去では同級生・加代をむざむざ2回も見殺しにすることとなった悟は、3度目の、そしておそらくラストチャンスであろう「再上映」に挑む。
悟の論理や言葉は、過去に生きる人たちには通じない。しかし、想いは時を超えて伝わる。
傍観者でしかなかった友人に重要な一歩を踏み出させ、親に虐待されるがままであった加代に自分の意思を伝えさせたのは、現代で無力感に捕らわれていた悟が「正義の味方」に成長した証でもある。

もうお前はひとりじゃない!
悟の「再上映」のループは閉じたようにも思えるが、本巻で明かされた謎は、あくまで「連続」殺人事件のひとつにすぎない……。
「第一部・完」のようなきれいな大団円だが、でっかいループの全貌は、まだまだ見えていないのだ。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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